[2019年6月27日]Yahoo!JAPAN連載「データで探求!神戸ってどんな街?」

【第3回】にぎわいを理解する~みなとこうべ海上花火大会~


こんにちは!ヤフーデータフォレスト・神戸市担当チームです。

ヤフーは、神戸市との「神戸市とヤフー株式会社とのデータドリブンな市政課題解決に関する事業連携協定」にもとづいて、データを活用した新しいまちづくりに取り組んでいます。そして、ヤフーではこういったデータ活用を通じた連携をデータフォレスト構想と呼んでいます。

その取り組みの中で、神戸市に関するさまざまなデータ=ヤフーデータやオープンデータを使って街の診断を行います。すると、今まで気づかなかった、あるいはなんとなく気づいていたけど客観的には示されてこなかった神戸の街の魅力に気づくことがたくさんあります。ここではそのデータで示された神戸の街の魅力を、みなさまに随時お知らせしていきます。

 

にぎわいをデータでとらえる

第二回ではヤフーでの検索キーワードから、神戸が「海・空・陸の総合交通体系」をもつ街だということを示しました。今回は、そういった総合交通体系により多くの人々が行き交う街の姿をご紹介していきます。Yahoo!地図に「混雑レーダー」という機能があり、たとえば三宮駅周辺の混雑度を地図上に表示できます。この機能を実現するためにエリアごとの混雑状況を推計し蓄積していますが、このデータを使って移りゆく街のにぎわいをデータでみていきましょう。この記事では、だいたい下記のエリア、時期を対象にデータをみていきます。

対象となるエリア:三宮駅を中心に、新神戸〜元町〜神戸駅〜メリケンパーク〜新港突堤を囲ったエリア

対象となる時期:2018年7月30日〜8月26日の4週間

まず、対象エリアにおける、期間中の人の集まり具合(混雑度)を日次でグラフにしてみます。

混雑度グラフ
図1)混雑度:全エリア・日次(2018年7月30日~8月26日の4週間)(ヤフー混雑度推定データ)


 

期間内にこのエリアでもっとも多くの人が集まっているのは「みなとこうべ海上花火大会」が開催された8月4日です。有料観覧席は完売、大規模な交通規制も敷かれました。もちろん、花火大会により街がにぎわうことは皆さんの実感ともあっていると思いますが、その詳細、たとえば時間や場所によってどういう推移となっているか、賑わっている人たちはどこから来ているのか、そういった分析はデータが得意とするところです。

 

にぎわいのうつりかわり

このグラフは「みなとこうべ海上花火大会」当日の、各エリア(抜粋)の混雑度を時系列グラフにしたものです。

 
混雑度グラフ
図2)混雑度:エリア別・時系列(2018年8月4日)(ヤフー混雑度推定データ)

 
 

まず、花火大会開始前に鉄道駅(三宮駅・元町駅・神戸駅)近辺に多くの人が集まり、花火大会の実施時刻である午後7時半〜8時半にかけてメリケンパークや新港突堤西地区など、花火がよく見える場所に移動しているようです。そして、花火が終わると駅に人が集中します。花火大会終了後の三宮駅の混雑は、大会前よりも激しく、ピークは短時間で終わることがわかります。
このような人の集中は街に活気や経済的な恩恵をもたらす一方、度をすぎると参加者への大きな負担となります。かといってピークにあわせて交通インフラ等を整備するのもコスト面で適切ではなく、利用の平準化にむけた工夫が必要となります。このようにピーク状況を可視化し、わかりやすい形で情報共有することはその第一歩といえます。


 

にぎわいはどこから?

では、このにぎわいは、どういった地域からの来訪によるものでしょうか、本データでは詳細な実数を把握することはできませんが、そのおおまかな傾向を推定することができます。以下は、三宮エリアに対して、神戸市以外から来訪していると推定される人の数を円の大きさで比較した図です。

三宮エリア訪問者の出発地傾向推定
図3)三宮エリア訪問者の出発地傾向推定(2018年7月30日~8月26日)(ヤフー混雑度推定データ)



 

青い円の「兵庫県(神戸市外)」には明石市や芦屋市、西宮市など、常時多くの人々が往来する近隣の市町村が含まれることを考えると、大阪府をはじめとする近畿地方からの来訪も、東京都含む関東地方からの来訪も、中四国・東海地方からの来訪も相当の規模感があります。三宮エリアは、関東以西を中心に全国から多くの人を集めているのです。

では、同じグラフについて、対象期間を8月4日、みなとこうべ海上花火大会当日に絞ってみましょう。
 

三宮エリア訪問者の出発地傾向推定
図4)三宮エリア訪問者の出発地傾向推定(2018年8月4日:みなとこうべ海上花火大会)(ヤフー混雑度推定データ)




 

オレンジ色の円「京都・滋賀」といった近隣府県の割合が高まることから、みなとこうべ海上花火大会が、京都府・滋賀県といった、普段の通勤やおでかけで往来する範囲(兵庫・大阪)の、もう一息遠方から人を集める効果があることが伺えます。
(注:図3と図4は集計対象の日数が異なり、円の大きさを比較することはできません)


 

データで「にぎわい」を理解する時代

まとめると、下記のようなことをデータから理解することができました。

  • 花火大会などイベント時の人のにぎわいは、時間と場所によってさまざまに変化するが、たとえば、混雑がピークに達する場所やタイミングをデータで可視化できる

  • 三宮エリアのように、広く全国から多くの人を集めている場所の来訪者の内訳を把握でき、イベントなどにより、街への来訪者の起点が変化している状況をデータで可視化できる

このようなマクロな人の動きを示すデータは都市計画を行う際の重要な根拠となります。従来「パーソントリップ調査」とよばれる大規模なアンケート調査等によって把握され、各地で実施されてきました。それらの数年に一度の詳細な利用実態の把握に加えて、上記のようなビッグデータによる分析を組み合わせることにより、継続的で、細かな実態把握が可能となります。
こういった新たなデータ・手法を導入することで、三宮再整備がよりよいものになるよう支援していきたいと考えています。