最終更新日:2023年6月8日
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・新長田シタマチスタートアッププロジェクト
新長田シタマチスタートアッププロジェクトー新長田南エリアで起業意欲のある方を募集します!ー
司会:
それでは、ただいまより6月1回目の市長定例会見を始めさせていただきます。
市長、よろしくお願いいたします。
久元市長:
よろしくお願いいたします。
私からは、今日、新長田シタマチスタートアッププロジェクトにつきまして、御説明を申し上げたいと思います。
新長田の南地区において、下町を対象としたスタートアップの起業支援ということです。新長田は再開発事業を進めてきておりまして、もう既に新長田の合同庁舎もできた。それから、国際コミュニティーセンターも移転をした。新しい商業施設もできている。おしゃれな、地下道もできているということで、再開発事業を進めてきました。夜間人口は相当以前に震災前を上回っていますが、昼間人口につきましても着々と増えつつあるという状況です。
さらに、この新長田はこれから駅前のロータリーもバスターミナルを整備して一新をすると。それから、再開発地区ももうほとんど完了しているわけですけれども、最後の再開発地区については、県立総合衛生学院が入居するビル、兵庫県を中心に新長田キャンパスプラザの整備が進められているということで、さらに、少し時間をいただきますが、若松公園に西市民病院が移転をするということで、再開発事業を進めてきました。
同時にこの新長田のエリアをこの再開発ビルがあるその周囲、東西、あるいは南側には下町の風情が残っています。震災でこの新長田エリアは非常に大きな被害を受けたところですけれども、その周囲については、震災の被害ももちろんありましたけれども、震災を乗り越えて、今もそういう下町の風情が生きていると。細い路地もありますし、また一方、この再開発エリアから入れば、銭湯があり、居酒屋があり、お好み焼き屋があり、お寿司屋さんがあり、老舗の喫茶店があると、こういう魅力あるエリアです。この下町のエリアをさらに活性化するということが必要であると考えてきました。
神戸市は、新長田開発事業の検証を行ったわけですけれども、これとは別に、民間の皆さんが別の立場から検証報告を出されまして、その中には、この新長田の下町の魅力というものをもっとアップさせるべきではないかと、界隈性ということが非常に大事ではないかと。再開発エリア、それからそれ以外のエリアも、人々がお互いにつながりながら、コミュニティーを大事にしながら回遊をすると。そういう界隈性が大事ではないかというような御指摘もいただきました。シンポジウムも行いましたけれども、その中でもそういう意見が出されたところです。
こういう下町の風情は確かにこういう、1つのシーンを切り取った写真ですけれども、同時に、それだけにこういう空き家が広がっておりまして、中にはかなり老朽な空き家もあると、同時にまだ使える空き家もたくさんあるというのがこの地域の特徴です。ぜひ、この町の界隈性をさらに魅力あるものにしていく。そしてこのエリアにスタートアップを呼び込んで、ここで起業をしていただくと、こういうプロジェクトを推進していきたいと考えています。
このシタマチスタートアップは、ここの空き家、空き店舗に、この起業家の皆さんに入っていただいて、ここでビジネスをスタートしていただくというものです。この空き家が減少をするということは、町にとって非常に大きなプラスです。そして、スタートアップの支援も神戸市は大分前から行ってきたわけですけれども、スタートアップは、何もこのDXとか、それからバイオメディカルといった極めて先端の分野だけではなくて、もっと私たちの身近な分野で仕事をスタートする、起業する、こういう分野の方々もスタートアップですね、こういう新長田の下町エリアでは、そういうような方々がやはりふさわしいのではないかというふうに思っておりまして、そういう方々に入っていただいて、集積ができれば、いろいろなコミュニケーションがそこで生まれる。
スタートアップは、やはり集積が集積を呼ぶ。スタートアップの皆さんが集まっているところに、さらにそこにスタートアップの皆さんが進出をしてくる。それは実際にフェイストゥフェイスで話をしながら、新たなビジネスチャンスがそこで生まれていくということなんだろうと思うんですけれども、そういうふうに、この起業家が集積をして新たな交流が生まれれば、町の魅力というものが向上していく。魅力が高まれば、そういうところに起業家の皆さんが入ってきて、そしてこの空き家、空き店舗もさらに対象を広げてそこに入ってきていただく。こういう動きをどんどん広げていくと、このいい循環ということが、持続的な好ましい循環ということが、この新長田の南地区をステージに生まれてくることができるのではないかと、そういう視点でこのプロジェクトをスタートさせたいというふうに考えているわけです。
神戸市としてどういうような支援をするのかということですけれども、まず、起業の準備です。一からスタートする方が多いと思いますので、計画をつくったり、資金調達をしたり、法人の設立の準備をする。先輩の起業家の皆さんのアドバイスをいただくということもあると思います。
空き家の活用については、この物件の掘り起こしを行う。ここには、神戸市も支援をしますけれども、不動産事業者や建築家の皆さんにも入っていただいて掘り起こしを行い、そして一つ一つの空き家をどういうふうに、この起業家の皆さんの意向を踏まえながら活用方法を検討する。もちろん所有者との調整も必要になります。
そして、全部の空き家は、もう全部の空き店舗と言ってもいいかもしれませんが、そのままでは使えないわけですから、改修が必要になります。神戸市を中心に補助金も用意をしておりますから、どういうものが使えるのか、その取得を支援する。そして設計と工事に入っていくと。
実際に起業するときには、取引先を紹介したり、PRや販路の拡大の相談に乗ると。そのときには、先輩起業家や広告クリエーターなどがお手伝いをさせていただくと、こういうような取組をしたいと考えているわけです。
そして、そのためにこの空き家の活用ということが必要になってくるわけですけれども、物件の掘り起こしをすると。そして、この物件の掘り起こしのタイプといたしましては、2つのタイプがありまして、起業家が所有者と直接交渉をし、契約をするというタイプ。その場合には、神戸市が必要な改修補助をする、先ほどのメニューを使った改修の補助をするということもあり得ます。
もう1つは、住環境整備公社、これはすまいるネットなどで、空き家の活用については実績もありますので、この公社が直接この空き家を借り上げまして、そして改修をし、賃貸をすると。必要な改修費用は、起業家の賃貸料で回収をしていくと、こういうスキームが考えられるわけです。
そして、これ全体のコーディネートをする民間事業者を募集することにしておりまして、その民間事業者が全体のコーディネートをすると。神戸市ももちろん直接支援をするということもありますが、そういうような民間事業者の方に入っていただいて、そして起業を、意欲のある方の募集を今日からしたいというふうに考えております。幅広い業種で、起業の意欲のある方にどんどん入っていただきたいと思っております。
このエリアの空き家の物件は、これは神戸市の都市局のほうで当たってくれておりまして、9軒の空き家を既に特定をしております。当面は9軒ですけれども、これを民間事業者の皆さんにも入っていただいて、これをどんどん広げていくと。
新長田の地区には、もともと長く住んでおられる商店の方、あるいは会社経営をされている方、地元の活性化に高い意欲を持っている方もたくさんいらっしゃいますし、同時に駒ヶ林などでは、自ら空き家を改修して入ってきていただいたクリエーターの方とか、芸術家の方とかも、かなり集まってきています。新しい動き、息吹が生まれつつあるエリアです。そこに神戸市がシタマチスタートアップの取り組みをすることによって、新長田の下町地区を、スピード感を持って活性化していく。起業家の皆さんに入ってきていただいて、その発想や知恵も取り入れながら、新長田の活性化を図っていきたいというふうに考えております。
私からは以上です。
記者:
新長田が今回シタマチスタートアップの舞台に選ばれたという理由を説明していただいたんですけど、加えまして、もともとものづくり産業が盛んな土地というところもあると思うんですけども、その点も、このエリアをこういう事業の舞台にしたという理由に含まれるのかどうかというところをお聞かせください。
久元市長:
長田区全体はケミカルシューズなど、ものづくりの産業が集積をしておりますが、もちろん新長田の周辺のエリアにも、あることはあるわけですけれども、どちらかといいますと、飲食店とか、商店とか、あるいは様々な仲介業とか、あるいは介護の事業者もありますけれども、ものづくりももちろんありますけれども、そういうものづくりの企業が集まっているとは言えないようなエリアではないかというふうに思います。
同時に、起業家に入ってきていただいて、長田区など、神戸のものづくりの企業に貢献をしていただくようなサービスというのは、それはあり得るだろうというふうに思いますし、ものづくりの町ですから、長田区は。そういう動きも期待をしたいと思います。
記者:
もう1点、すみません。新長田周辺の震災からの復興事業で、ビルというか、アスタくにづかとか、そういうところをつくられて、一方で空きテナントが課題になっているというところもあると思うんですけど、今回の事業で、そういう復興事業によりいい影響が生まれればというような期待もおありでしょうか。
久元市長:
1つはアスタくにづかの中に、パワーポイントの中にはなかったかもしれませんが、配付した資料の中にはありましたかね、アスタくにづかの中にヨンバンカンニカイというコワーキングスペースがあるわけです。ここはコワーキング、誰でも自由に使えるところと、それで、そこに入居をしてビジネスをやる個室のスペースと、両方あるわけですが、起業家の方は、空き家の改修が終わるまでは、ここに一時的に入居していただいて、そして、ここでビジネスをスタートさせる様々な準備をしていただくということもあり得るというふうに思いますから、こういうところに起業家の皆さんが出入りをするということになると思います。行く行くは再開発ビルと下町とのスタートアップの皆さんも含めた交流のようなものが生まれれば、そこにまた新しいビジネスチャンスが生まれてくるというふうに思います。
再開発ビルの活性化については、神戸市が分譲した権利床、既に分譲が終わっている権利床と、それから神戸市が持っている保留床がありまして、保留床については、これは売却を進めているわけですが、同時にかなりの部分、賃貸しているところもあります。こういう売却と賃貸を適切に進めていくということ、それから、これはなかなか難しい課題で、検討中なんですけれども、共益費を少しでも下げられないかという検討は現在行っております。
記者:
改修対象として想定されている空き家について伺いたいんですけれども、政府が閣議決定で、3月頃に空家の特別措置法を閣議決定されたと思うんですけども、それでは管理不全の空き家、ちょっと壁に穴が空いているだとか、そういう空き家について、税制の優遇措置から除外するという措置になるというふうになったと思うんですけれども、想定として、そういったある程度、そういう傷とか汚れがあるような空き家についても、改修の対象となるというのを想定されているのかどうかというのをお願いします。
久元市長:
この空家特措法は成立したばかりですね。ついこの前、成立したばかりですね。この施行通知というのは、もちろんまだ来ていないんですけれども、私どもがこの法案を検討したところ、新たな特定空き家に加えて、管理不全空き家というカテゴリーができて、管理不全空き家については固定資産税の居住地特例を外すという対象になるわけです。これは特定空き家よりも範囲が拡大されるわけですが、まず、管理不全空き家になるようなものは相当古いわけで、老朽危険家屋ではありませんけれども、かなり古いものですから、管理不全空き家が空き家活用の対象になってくるというのは、ちょっと想定し難いかなというふうに思います。それよりももうちょっと、まだ使える可能性が高いようなものを最初に考えたいと思っています。
記者:
対象となるスタートアップについてなんですけれども、そのお考えとしては、やっぱり新長田南界隈に資する、例えば住んでいらっしゃる住民とかに向けた、やっぱりサービスを行う、そういうスタートアップを想定していらっしゃるんでしょうか。
久元市長:
そういう方々に入っていただいたら、もちろんいいわけですけれども、何かカテゴリーを限定するということは考えておりません。先ほど申し上げましたように、スタートアップというと、やはり都心に、どちらかというと進出をすると。それから、神戸であれば、医療産業都市のラボビルなどに進出をする、CLIKなどに入っているような、ああいうスタートアップが今まではメインだったんですよね。非常に最先端、DXを駆使する、新たなテクノロジーを駆使する、それから、最先端の医療とかバイオの技術などに挑戦するという分野が、どちらかというと多かったわけですけれども、スタートアップというのは、そういう業種に限られるわけではありません。もっと身近なビジネスというものをスタートさせるということは、これは十分あり得るわけで、神戸ではそういうことを考えたときに、新長田が今起きている様々な事象や動きということを考えたときに、ここがふさわしいのではないかと。そこでは、ですから何か対象を限定するということではなくて、この地域が持っている特徴とか、あるいは魅力とかということを生かしていただくようなそういうスタートアップに、あるいはそれをうまく活用していただけるようなスタートアップということがあると思いますから、ここに書いてあるように、先ほども申し上げましたけれども、ものづくりに資するようなサービス。ものづくりそのものをやるということもあるかもしれませんが、何かを製造、加工、販売するというような業種、あるいは既にあるものづくりに対して様々な付加価値を提供するようなサービスもあるかもしれませんし、ここは非常に魅力のある飲食店がたくさんありますから、また新たなタイプの飲食店をやるとか、小売、それから規模の小さな宿泊ですよね。そういうようなもの、それからまちづくりに対する提言とか、ソーシャルビジネスとかもいろんなタイプのものがあるだろうというふうに思います。
もちろんこの周辺のエリアにもいい影響を与えてほしいと思いますが、それにとどまらず、とにかくビジネスを順調にスタートさせて、これを成長させていくことができるような取組を是非していっていただければというふうに思っております。
記者:
あともう1つ伺いたいのが、今回のシタマチスタートアッププロジェクトは、神戸市にとって実験的な位置づけなのか、それとも医療産業都市のような、もう本当にこの新長田をスタートアップの、医療産業都市に似通ったというか、次ぐような、そんなエリアに育てていきたいのかというのはどうなんでしょうか。
久元市長:
新長田は、かなりの事業費を通じて再開発ビルを造り、そこにもともと震災で被害を受けた、震災で一時的に営業をやめざるを得なかった、あるいは中断せざるを得なかった方に入ってきていただく、住宅を失った方に戻っていただく、そういう再開発ビルを造ったエリアで、その周りにはケミカルなどのものづくりの集積があるという街ですよね。さらに、下町ということにも着目をしてスタートアップを展開していくということですから、そこは新産業都市が全く更地というか、新しくつくったポートアイランドのところ、ゼロからスタートしたという状況とはかなり違うと思いますから、新産業都市のようなイメージの産業振興ではなくて、既に成熟した都市としてあるエリアに新たな活力と魅力と可能性というものを、このプロジェクトによって加えていきたいというふうに考えています。
記者:
最後にもう1つだけなんですけれども、市長、この御説明の中で、町の界隈性について言及されていたと思うんですけれども、新長田南ですと下町風情がやっぱり象徴的なのかなと思うんですが、スタートアップとのタッグを組むことでその界隈性、下町風情というのは持続可能かというのがちょっと何か、まだあんまり結びつかないんですが。
久元市長:
仮に、スタートアップのためにピカピカのビルを建てて、そこにみんなが入るというようなスタートアップ振興策であれば、そこからはなかなか界隈性というのは生まれにくいかもしれないですね。あるいは生まれるかもしれませんが。それよりも、空き家というのは散在しているわけです。固まってあるのではなくて、一定の狭いエリアの中に空き家というのはぽつぽつ、ぽつぽつあるわけですね。そういうところに入っていただくと、当然、御近所さんとかにも「どうも、どうも」とかいって挨拶をすることにもなりますし、ここはもともと人と人とのつながりが非常に強い地域ですから、そこでスタートアップの皆さんがビジネスを始める過程でも、いろんな相談もあると思うんですよね。
もう既に、先ほども申し上げましたけれども、このエリアの中ではエリアの活性化、それからまちづくり、コミュニティーづくりに取り組んでおられる方がたくさんいらっしゃいます。私もその中の何人かとは、現地に行って立ち話をしながら街を案内してもらったり、非常に熱意を持って取り組んでおられる方がいらっしゃいますし、もともと、先ほども申し上げましたけれども、駒ヶ林の路地裏には、外から入ってきていただいて、それこそ空き家を改修して、いろんな芸術活動とか新たなビジネスに取り組んでおられる方々もいらっしゃいますね。
界隈性というものは既に存在している中で、そういう散在した空き家の中にいろんな方が入ってくる。そして、もともとそういう人と人とのつながりとかコミュニケーションが盛んな地域ですから、そういう界隈性というものがより大きく高まっていくということになるのではないかな、新たな魅力が加わっていくのではないかなというふうに感じています。
記者:
ちょっと複数点お伺いしたいんですけれども、まず空き家がこの新長田南エリアで大体どれぐらいあるのかというような統計的な部分が、もし分かれば教えていただきたいんですけれども。
職員:
国の統計上では区単位までしか出てないんですけども、昨年、都市局のほうでこの辺り、界隈を空き家調査いたしまして、おおむね100軒程度の空き家を確認しております。推定空き家という形で確認しております。今回、そちらのほうにアンケートをお送りしまして、9軒という活用の対象の物件も拾っているというところでございます。
記者:
ありがとうございます。取組によって空き家の、今100軒程度あるというのがどんどん少なくなっていくことも非常に大切なことだと思いますし、長田自体も高齢化率が3割以上ある中で、スタートアップの方となると若手の方を想定されていらっしゃるのかなと思うと、そういう高齢化率を下げるという福祉的な効果もあるのかなと思ったんですけども、その点はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
久元市長:
100軒近く、これ、都市局の皆さん、よく一軒一軒探していただいたなと思うんですけどね。これ、100軒を全部活用するというのは、相当これは難しいことですね。これは新長田に限らず、農村地域でもそうですけど、所有者の方が、やっぱりなかなか空き家活用に踏み切れない。これはやっぱり心理的な要因もあると思うんですよね。もう既に外に出ていって、別のところに、近くとか、あるいは全く違うところに住んでおられる方々も多いと思いますが、やはり子供のときに御両親と一緒に育った懐かしい家が、全然知らない人に売却してしまう、まだ御両親の遺品も残っている、仏壇もあると。そういうような家を実際に処分したり賃貸するというのは、相当心理的抵抗があるという、そういうケースが大変多いのが実情です。
そういう中で、神戸市が介在する形で、実際のコーディネートは委託する事業者にやってもらいますけれども、実際、中に入って所有者の方々にもよく説明をして納得していただいて、こういう新しい動きに貢献をしていただくというような取組が重要だろうというふうに思います。実際、確実にできそうなのが今9軒あるわけですけど、9軒をどんどん広げていくと、安心されるかもしれません、ほかの方は。あそこはああいう形でうまくいったと。そこで賃貸料収入も入ると。外観は変わらない形で、中身は見違えるようになった、非常に「よかった、よかった」というようなケースが、この9軒からをスタートにして、うまくいけば、そういういい動きがこの100軒の中の幾ばくかにも広がっていって、空き家活用につなげていってほしいというふうに思います。
それから、高齢化率を下げる効果というのは多少あるかもしれませんが、数字として高齢化率まで下げるところまでは、この施策だけではなかなか難しいでしょうね。やっぱりこれも1つ、その方策です。若い世代の方が入ってきていただく。全体的に活気が出てくれば、非常にいい雰囲気が出てくれば、そこに着目して新しい人たちがここに移り住んでくるという、そういういい変化というものを期待したいと思いますし、これだけでは高齢化率を下げる効果は極めて限定的だと思いますけど、このことがきっかけとなって、ほかの施策とも相乗効果を持ちながら、若者、若い世代の移住・定住につながっていくような政策展開をしていきたいというふうに思います。
記者:
分かりました。その中でそうなっていけばすごくすばらしいとは思うんですけれども、実際にスタートアップの方が起業するに当たっての場所を選定するに当たって、長田がすごく魅力的だなと思ってもらえる何か仕掛けというか、いろいろ数ある場所の中で、長田により一層魅力を感じてもらうための何か仕掛けみたいなのがあるのであれば、何かお考えであれば教えていただきたい。
久元市長:
それは、このプロジェクトそのものは、これは長田のここをターゲットに展開するわけですから、このプロジェクト自身が新たなスタートアップの皆さんを呼び込む仕掛けそのものだというふうに思います。長田自身については、これは非常にいろんな意味で新旧の魅力を融合したようなところがありますから、そういう魅力というのをできるだけたくさんの方に知っていただくような情報発信、あるいは広報なども大事なことだなと思います。
記者:
要は、再開発している新しくなっている部分もあれば、そういう界隈性もあるというところのミックスされた部分というのが新長田の魅力だということで発信されていくということですね。ありがとうございます。
記者:
プロジェクトそのもののお話とはずれるんですけど、市長、最初のお話のところで、民間からの検証報告のお話もありましたけど、新長田の南側エリアの再開発をめぐっては、いろいろ賛否もあったりする中で、改めて、今、震災から28年以上たった現在のこの再開発エリアを市長はどう御覧になっていらっしゃるんでしょうか。
久元市長:
これは、歴史を巻き戻せば、今から思えば、別の選択肢や、あるいはもっとこういうふうにやったほうがいいということはひょっとしたらあったかもしれないと思うんですが、しかし、震災で、神戸市内の中でも最も甚大な被害を受けたエリアを短期間のうちにこれを復旧復興させるという相当強い決意で、当時の神戸市政は、震災から2か月後に新長田の震災復興事業を都市計画決定して、そして再開発事業をスタートさせたわけです。そういうことを考えれば、やはりこれを元に戻すことはできないわけですから、このことを前提として、この再開発事業の成果というものをしっかりと、より生かしていく取組ということが必要で、その観点から、繰り返しになりますが、ここ10年ぐらいの間に、例えば県市の合同庁舎ですとか、それから、その後、兵庫県と調整して、今、ご説明いたしました総合衛生学院の移転、それから、新たな地下道の整備、商業施設の誘致、それから、バスターミナルの整備、新西市民病院の移転と、こういうことで、昼間人口の増加、それから、まちのにぎわいを回復させるという努力を行ってきたところです。
それに加えて、今まではどちらかというと、この再開発地区のエリアと、それからインフラの部分を行ってきたわけですけれども、提言にもあったような、周囲に広がるこの下町の雰囲気を生かしたまちづくりということで、これはやっぱり非常に重要な要素で、可能性としてもあるので、下町を対象とした取組はこれからもあるいはあるかもしれませんが、スタートアップの皆さんにここに入ってきていただくということによって、新長田の再開発地区とその周辺を、新長田の南地区というものをより未来志向で、よりよい形のまちにしていくという取組をしたいというのが基本的な考え方です。
記者:
このタイプの、今回のプロジェクトのスタートアップというのは、いわゆる急成長を目指してイグジットが目標でというスタートアップでは必ずしもなくて、幅広い起業したいという人ができるだけ新長田に集まるといいなというようなものだというふうに理解をしたわけですが、そういう場合の起業支援って、既に神戸市の制度としても割と充実しているものがあったりとか、それこそ先端的なものですとCLIKだとかというお話も出ていましたし、身近な企業だとしても、既にハーバーランドの産業振興センターであったりとかでもかなり手厚くやっていただいて、個人的にも相談に乗っていただいたりして大変助かっているんですが、そこで、あえて新長田を選ぶメリット、神戸市の中ですら選択肢がある中で、あえて新長田を選ぶメリットがあるとしたら、それはどういったことになるか。家賃とかは安そうかなとか思うんですが、新長田のここが売りですよと、そのほかのスタートアップ支援にない良さみたいなのはここですよというのがもしあれば、お伺いできればと思います。よろしくお願いします。
久元市長:
新長田の再開発事業というのは、神戸市が震災の後の復興事業の中の極めて重要なプロジェクトとして推進をしてきたものです。これは、再開発事業としてはほぼ終息しておりますけれども、同時に、費用対効果などについては様々な議論がありましたし、今もあるところですね。そういうことを踏まえれば、この再開発事業というものをより未来志向でこれを進化させて、そして魅力のあるまちづくりということを行っていく必要があると。その有力な方策が下町におけるスタートアップ支援ではないかというふうに考えたわけで、今お話ししたこととも裏腹の関係にありますが、それを推進していく素地というものがこのエリアにはあると。これは繰り返しませんけれども、まちのたたずまいや、あるいは界隈性や、ここにおける様々な多様な人材の集積や活動、こういうものが既にある。そういうことを考えれば、ここで下町のスタートアップをスタートさせ、そして、ここに魅力のある起業家が集まってきていただく可能性というものは、これは十分あるのではないかということですね。
ですから、スタートアップ施策の1つのパターン、これは新長田という特定のエリアに着目したスタートアップ施策というのは、これは、これまで取り組まなかった話ですけれども、ここでぜひやっていきたいということと、それから、スタートアップ施策として、こういう下町というエリアにふさわしい、あるいはそこに合うような起業家の皆さんに入ってきていただくということは、スタートアップ施策の幅を広げていく。産業振興センターは、これは特定のエリアというものを意識せずに、全市の、神戸市だけではないかもしれませんが、スタートアップの支援を行っているわけですけれども、スタートアップ施策として、また新たなタイプのものを今回追加して、スタートアップ振興施策の厚みを増すということも狙っているということです。
記者:
何というか、柔らかい言葉であえて言うとすると、まちの側に受け入れる気持ちが大きいというようなことだというふうに理解していいんでしょうか。
久元市長:
そう御理解していただいても結構かなと思います。
記者:
神戸市のパートナーシップに対しての考え方、変わったというふうな一部報道もありましたけども、市長からお聞かせいただければと思います。
久元市長:
パートナーシップ、すなわちLGBTの方々に対する神戸市の考え方、あるいは神戸市の政策は、これは一貫しております。やはり、LGBTに関する理解促進をしていくということと、それから、このLGBTの方々が神戸の中で気持ちよく住み続けることができるように、神戸市としてできることをしっかりやっていくということは一貫しております。
同時に、変わったというふうに御質問されたのは、恐らくこのパートナーシップ宣言に関する方針といたしまして、5月の市会の本会議の中でこの導入について年内の実施を1つの目標として進めるということを答弁したので変わったというふうに受け取られたかもしれませんが、これは様々な市会における議論を踏まえて、そういう対応を取るということにしたわけで、基本的な考え方の基本の上に、具体的にそういうパートナーシップ宣誓制度の導入を検討していくという方針を明らかにしたものだというふうに思っています。
記者:
以前からもコールセンターを設置したりとかいろいろとあったと思うんですけれども、実際にその制度、パートナーシップ宣言、あるいはその制度に向けて具体的に動き出そうとしたきっかけというのは何かあったんでしょうか。
久元市長:
それは、経緯的に申し上げますと、昨年の10月にパートナーシップ宣言制度に関する協議を開始、パートナーシップ制度の創設に向けた協議を開始するという陳情が採択をされた。ここでは、ほかの都市の導入事例も増えているということもありましたので、その後、ほかの都市の事例も調査をしてきたということで、そういう状況を踏まえれば、やはりこれを、導入に向けて検討するということが必要だというふうに考えられましたから、この陳情が採択された後、そういう調査も行い、そして5月に、年内にこれを導入していく、検討するということを申し上げたというところです。
記者:
今、国のほうでも審議が始まっていて、採決が一部されたりとかある、LGBTに対してですけども、この国の動きというのもその背景にはあるんでしょうか。
久元市長:
国の動きというのは、あるというのは知ってはおりましたが、もちろん国の動きも注視をしておりましたけれども、基本的に私どもが考え方を整理していく上で中心になったのは議会における動きです。こういう陳情が採択されたということと、それから、3月には「男女共同参画の概念を元に、社会全体が性のあり方の多様性を受け入れるための環境整備を求める意見書」というものが採択をされて、国の各大臣に議長名で提出をされていると。そういう議会の動きを念頭に置いて、こういう方針を打ち出していくということです。
記者:
県内周辺を見ますと、宝塚市をはじめ三田市など既に導入を進めたところもある中で、この神戸市が導入、制度の制定に至らなかった、そして、政令市の中でほとんどが導入している中で、ここの神戸市が導入ができていなかった、そこは市長はどういうふうにお考えでしょうか。
久元市長:
1,700ある自治体の中で、この1月時点の数字ということになろうかと思いますが、このパートナーシップ宣誓制度を導入している自治体は、たしか255だったと思いますが、そういう中で神戸市が特段遅れているというふうには感じてはおりません。
同時に、そういうふうに検討をしてきたのは、先ほど申し上げましたように、議会での議論というもの。これは実務的に行政を執行するという、こういうカテゴリーの仕事ではなくて、様々な価値観が存在する中で、また、LGBT増進法案でも各党の意見が分かれているように、やはり十分な議論が必要な分野だということですから、まさにこれは議会においての議論というものをしっかり踏まえて対応する必要があるというふうに考えたということが1つです。
もう1つは、導入されているパートナーシップ宣誓制度の内容というのは、必ずしも同じではなくて、対象が違っているということと、それから、自治体によっては制度の内容を変えたところもあります。ですから、そういうことを考えれば、やはりそういう状況もしっかり調査する必要があるのではないかなということですね。
同時に、この問題は、基本的には地域差がある問題ではなくて、これはグローバル社会の中でと言ってもいいかもしれませんが、少なくとも我が国の国内においては、これは地域によって考え方が違うという話ではなくて、やはり共通の物差しで、共通の考え方で進められなければいけない話であろうというふうに思うんですね。そういう中で自治体として対応するということについて言うと、やはり議会での議論と各都市の状況ということをしっかり踏まえて、神戸市にふさわしい制度をつくっていくと、そういう問題意識で取り組んできたところです。
記者:
おっしゃるとおり、各ところで全然制度の内容、理念も違うわけですけども、神戸市としてはどこまで踏み込む予定なのか。例えば市営住宅のお話とか、いろいろな証明書のお話とかあると思うんですけども、どういったことを念頭にその制度を進めていくのかというのはありますか。
久元市長:
やはりLGBTの方々が実際に神戸で生活していく上で、特に住居などの面で、あるいはそれ以外の行政サービスを受けるという面で、LGBTであるということを理由にして支障を受けることがないようにするという視点が大事だというふうに思います。そういうような基本的な考え方に立って対象をどうするのかということを引き続き検討して、年内の導入を目指していきたいというふうに思います。
記者:
すみません、最後にですけども、年内の導入を目指して、このLGBTへの理解が促進され、パートナーシップが導入された場合、市としてはどういうまちにつながっていくのか、どういう市民の理解につながっていくのか、市長の考えをお聞かせください。
久元市長:
やはりLGBTの方々が、LGBT以外の方々と同じように気持ちよく暮らすことができるような神戸にしていくということだと思うんですね。同時に、そのためには、様々な考え方が存在するということですね。例えばLGBTの方だけに限ったパートナーシップ宣誓制度に対しては、これはそのことがカミングアウトにつながるので適当ではないという御意見も、LGBTの方からも寄せられているということも事実です。
そういうようなことも踏まえれば、対象をどうするのかということはいろいろと考えて、そして、様々な御意見がある中で、できるだけ受け入れられやすい内容にしていく、理解が広がっていくような制度にしていくことが大事ではないかと考えています。
記者:
LGBTのパートナーシップ制度の件でお願いします。
先月の段階の取材ですと、たしか同様の制度を導入されていたのが、政令指定都市ですと、神戸市を含めて導入していないのが2つの自治体だけだったかと思うんですけれども、そういった点を見ても、市長としては遅れては特にいないという認識ということでよろしいでしょうか。
久元市長:
そうですね。1,700以上ある自治体の中で導入しているところが255ですから、神戸市が特段遅れているというふうには思わないです。現実にこういう形で年内の導入に向けて検討するということも申し上げているわけですから、そういう方針に沿って作業を進めていきたいと思います。
記者:
ありがとうございます。すみません、あと、別件なんですけれども、マイナンバーカードについて、最近も家族口座についての対応をデジタル庁がされていると思うんですけれども、今把握されている中で、神戸市の所管内で何かしらのトラブルなんかが報告されていないかどうか、あるいは、新しく何か対応される予定のことがあるかどうかについて、今回もお願いします。
久元市長:
ちょっとうまくカテゴリーが分けられているかどうか自信がないんですけれども、1つは、コンビニでの証明書サービスで他人の証明書が交付されたというのが1つのカテゴリー、もう1つは、マイナンバーカードと健康保険証のひもづけが違っていたというのが2番目のカテゴリーで、3番目が公金受取口座のひもづけが違っていたというのが3番目のカテゴリーで、4番目がマイナポイントのひもづけ誤りという、やっぱり4つあると思っています。
最初のコンビニ交付の誤りは、神戸市では確認されていません。これは事業者が違っているということが一番大きな原因だと思います。あと、それ以外のものは、ほかの自治体で確認されているのは、例えばログアウトをせずにログインをしたまま入力をしてしまったというようなケースで、これは窓口における人為的ミスということになっていますが、そういうようなものも確認されていません。
しかし、これが全くないのかどうかということは断言できません。この点については、国からは、特に健康保険証とのひもづけのところは過去に登録した加入者の資格情報を点検してほしいという依頼があり、また、マイナポイントのひもづけ誤りの事案については、これは人為的ミス以外のものも調べてほしいという要請がありまして、これは、現在、調査中です。今、調査中であるということです。
ですから、今の段階で問題事案が生じているかどうかということについては、調査を行った上で速やかに公表したいと思います。
記者:
生成AIの行政利用について伺いますけれども、6月に入りまして、スケジュールについて決まってきているものがあれば教えていただければと思います。
久元市長:
まず、生成系AIについては、この前の5月議会で条例が議決されました。この議決では、一定の要件を満たしたものは市長が指定して個々に必要な情報を入力することができるという規定がありまして、この市長が定めるもの、市長が定めるAIチャットボットを指定するいう手続が直近に出てきます。これにつきましては、6月12日に予定されている常任委員会で報告を行うことにしております。
この報告に基づきまして、まずは試行するということ。これは前も記者会見で申し上げてきたところですが、3か月程度、100人の職員を選定して試行することになります。同時に、試行する上でもルールがなければいけませんので、100人の職員が、指定したAIチャットボットをこういうルールで使うんですよという試行用のガイドラインを速やかにつくって、この試行用のガイドラインに基づいて100人の職員が試行作業をすると、そういう作業を当面予定しております。
記者:
ありがとうございます。これは、6月12日に報告を行って、即日ということになるんでしょうか。
久元市長:
報告をして速やかに指定するということになりますし、試行についても、できるだけ早く入っていくことになります。
記者:
ありがとうございます。あと、そのガイドラインに関しては適宜修正していくというふうに以前の会見でもおっしゃっていたかと思うんですけれども、最初の段階では、以前も個人情報の部分に関しては、初期に関しては禁じていくというようなお話もあったかというふうに認識しているんですけど、その方向になるんでしょうか。
久元市長:
いや、禁止しているという状況はずっと続いているわけですよ。禁止している中でこの100人の職員は試行的にこれを使うということで、試行するためのガイドラインを設定するというわけですから、これは適宜見直すというわけではなくて、その試行のガイドラインに基づいて試行の作業をするということですね。
その試行をした上で、それに基づいて本格的にこれを利用する作業に入っていくわけですが、そこでつくるガイドラインというものは、国のほうでもいろいろ有識者会議で検討されているでしょうから、そこから先はちょっと今の段階では明確なことは言えませんが、試行した上での作業を踏まえて、本格利用するときには、当然、ガイドラインをつくらなければなりません。そのガイドラインは、やはり様式的には、生成系AIというものがどんどん進化していくということを考えれば、やはりその状況に応じて適宜見直していくという作業が恐らく続いていくことになるのではないかと今の段階では考えております。
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