記者資料提供(2023年12月22日)
企画調整局医療産業都市部調査課
1.概要
神戸市立神戸アイセンター病院がシスメックス株式会社との包括協定(2020年2月締結)に基づき共同開発し、先進医療B「遺伝性網膜ジストロフィーにおける遺伝子診断と遺伝カウンセリング」として実施した遺伝子検査が、本年8月に保険適用となり、神戸アイセンター病院は日本網膜硝子体学会から検査実施施設に認定されました(認定時期:2023年12月7日)。
また、神戸市立医療センター中央市民病院・神戸市立神戸アイセンター病院は当該検査の結果を用いて実施する遺伝子治療について、同学会から実施施設認定を受けました(認定時期:2023年8月18日)。
なお、当該治療実施施設は国内2施設のみで、今後、眼科における日本初の遺伝子治療の提供を開始する予定です。
2.遺伝性網膜ジストロフィーに対する遺伝子治療
遺伝性網膜ジストロフィーの原因遺伝子の1つである
RPE65遺伝子に病的変異があると、RPE65タンパク質を作ることができず不足してしまい、夜盲(暗いところでものが見えにくくなる)、視野狭窄(視野が狭くなる)などの視覚障害が生じます。
遺伝性網膜ジストロフィーに対する遺伝子治療では、「ルクスターナ®注」(ノバルティスファーマ株式会社が販売承認を取得)を使用し、異常な網膜色素上皮細胞へ
RPE65遺伝子を投与することで正常ヒトRPE65タンパク質を長期間安定して発現させます。
この薬剤は眼科疾患の遺伝子治療として日本初の遺伝子補充療法の薬剤で、当該治療実施施設として、神戸市立医療センター中央市民病院/神戸アイセンター病院・独立行政法人国立病院機構東京医療センターが学会認定を受けました(国内で2か所のみ)。
3.遺伝子検査・遺伝子治療対象患者
遺伝性網膜ジストロフィーと診断され、
RPE65遺伝子に病的変異を疑う場合に遺伝子検査を実施し、
RPE65遺伝子に病的変異が認められ、十分な生存網膜細胞がある成人及び小児患者に対して遺伝子治療を検討します。
参考
遺伝性網膜ジストロフィー
遺伝子変異が原因で網膜の機能に進行性の障害をきたす一連の疾患で、代表的な疾患として網膜色素変性があります。夜盲(暗いところでものが見えにくくなる)、視野狭窄(視野が狭くなる)などの症状から始まり、場合によっては失明する可能性がある遺伝性・進行性の病気です。
先進医療B
保険適用されていない医療は自由診療となり、患者の自費負担となりますが、保険診療と自由診療を組み合わせた混合診療は、認められていません。
先進医療は、効果・安全性などの評価が定まっていない新しい試験的な医療技術のうち、将来的に保険適用の対象にするかどうかを判断するため、有効性・安全性の評価を行う医療技術として厚生労働省が認めたもので、医療の選択肢を広げ、患者の利便性を向上するという観点から、例外的に保険診療との併用が認められます。
このうち、未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴わない医療技術は「先進医療A」、未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴う医療技術は「先進医療B」に分類されます。当該先進医療Bとして、これまで国内で100名の患者に検査を実施しました(内神戸アイセンター病院で80例実施)。
遺伝性網膜ジストロフィー遺伝学的検査から治療の流れ
遺伝カウンセリング
遺伝に関わる悩みや不安、疑問などを持たれている方々に、科学的根拠に基づく正確な医学的情報を分かりやすくお伝えし、ご本人の意思を尊重しながら問題の解決に向かっていけるよう、心理面や社会面も含めた支援を行う医療。
エキスパートパネル
遺伝子検査で得られた結果が、臨床上どのような意味を持つのかを主治医、臨床遺伝専門医、遺伝カウンセラー等が医学的に解釈するための会議。
関連画像資料
遺伝子治療薬剤調剤シミュレーション(神戸市立医療センター中央市民病院)
医師・遺伝カウンセラー等による結果評価(神戸アイセンター病院)
お問い合わせ
地方独立行政法人 神戸市民病院機構
(遺伝子検査・遺伝子治療に関すること)神戸市立神戸アイセンター病院 電話 078-381-9876(代表)
(遺伝子治療時の入院に関すること) 神戸市立医療センター中央市民病院 電話 078-302-4321(代表)