最終更新日:2024年10月2日
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神戸市では、2020年度より医療・介護のレセプトデータや健診データを連結・匿名化した「ヘルスケアデータ連携システム」を整備し、科学的データに基づく健康施策の推進を図ってきました。
今年度は、健康データの分析結果をさらに迅速に施策の企画・立案へつなげるために、本市の保健医療行政における重点課題のうち以下の3つをテーマとして設定し、本市施策へ活用できる研究を6件採択しました。
今後、採択した研究につきましては定期的に中間報告を受け、そのつど保健医療施策へ活用します。また、最終的な研究成果については、市民にわかりやすく公表します。
1.神戸市における課題・研究活用例
【課題】
高齢化の進展や気候変動による熱中症の増加等により、救急要請の更なる増加が見込まれており、救急需要対策が急務となっています。
【研究活用例】
軽症者や転院搬送における救急搬送事例の検証や地域別の出動傾向の分析、将来の救急需要予測等により、救急搬送の適正化や効率化など、増え続ける救急需要の対策に活用します。
2.採択者 ※五十音順
研究責任者 | 所属 |
有吉 孝一氏 | 神戸市立医療センター中央市民病院 |
上野 恵子氏 | 京都大学大学院医学研究科 |
上東 貴志氏 | 神戸大学計算社会科学研究センター |
山岡 淳氏 | 神戸大学経済学研究科 |
1.神戸市における課題・研究活用例
【課題】
子宮頸がんを未然に防ぐためには、HPVワクチンの接種・子宮頸がん検診が効果的であることが分かっていますが、その接種率・受診率は低い状況が続いています。
【研究活用例】
子宮頸がん検診、HPVワクチン接種の傾向(地域性、経済状況等、両者の関連性等)を分析することで、未受診者(未接種者)の傾向を把握し、今後の受診率(接種率)向上にむけ市民への啓発に活用します。
2.採択者
研究責任者 | 所属 |
大崎 博之氏 | 神戸大学大学院保健学研究科 |
1.神戸市における課題・研究活用例
【課題】
地域によって、国保特定健診の結果や特定保健指導の利用状況に違いがあったため、小地域単位での健康状態や健康寿命の実態を把握し、将来を予測することで、対策のターゲットとすべき地域やアプローチ手法を明らかにする必要があります。
【研究活用例】
ハイリスク層の将来推計などの分析により、特にアプローチが必要な圏域・属性を明らかにすることで、神戸市における健診受診率向上施策や医療機関受診勧奨施策の検討に活用します。
2.採択者
研究責任者 | 所属 |
片岡 葵氏 | 神戸大学大学院医学研究科 |
神戸市は、今まで別々に記録されていた個人の医療・介護・健診等のデータを個人ごとにまとめる「ヘルスケアデータ連携システム」を2020年度に構築し、運用しています。
過去から現在までの健康データが網羅的に分析できるようになることで、市民の健康状態や生活習慣をより正確に把握でき、将来かかるかもしれない病気の予測や要介護状態に至る要因の推定ができる可能性があります。
また、保健・医療・介護分野において、エビデンスに基づく政策立案(EBPM)を推進することで、疾病予防や生活機能の改善(フレイル予防)など、健康増進に向けた保健事業を効果的に実施できます。例えば、生活習慣病と要介護状態の関連等の分析により、将来要介護状態になる可能性が高い方への効果的なアプローチが可能となるなど、様々な効果が期待されます。
さらに、実施した保健事業の効果に関してもデータを用いて評価できるため、より良い保健事業の展開に繋がります。
①医療レセプトデータ(国保・後期高齢者・生活保護)
年齢、性別、傷病名、診療行為、医薬品、医療機器、受診医療機関、医療費、受診日数 など
②介護レセプトデータ
年齢、性別、種類別介護サービス単位数、利用介護施設、要介護度、介護費 など
③介護認定調査票
日常生活自立度、ADL、要介護度 など
④健診/検診データ(国保・後期高齢者・生活保護/がん検診・歯科検診(市実施分))
身長、体重、BMI、腹囲、血圧、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、GOT、GPT、γ-GT、血糖値、HbA1c、尿糖、尿蛋白、メタボリックシンドローム判定、保健指導レベル、生活習慣、基本チェックリスト など
⑤被保護者調査のための行政記録情報
受給開始年月日、扶助内容、家族構成、開始理由、就労状況、就学の状況 など
⑥予防接種の接種状況
新型コロナワクチン、高齢者肺炎球菌、HPV・ロタウイルス・小児肺炎球菌等の小児対象のワクチン など
⑦救急隊出動情報及び傷病者情報
発生年月日、事故種別、傷病者情報、搬送情報 など
⑧転入・転出・死亡日等一覧表
【ヘルスケアデータ連携システムイメージ図】
ご不明点等については、電子メール(hcd@office.city.kobe.lg.jp)にてお問い合わせください。
神戸市においても、学術研究等の目的や公益性を考慮した上で、必要な情報を学術機関へ提供する場合があります。その際には、神戸市ホームページに掲載し、市民への情報提供及びオプトアウト(拒否)の機会確保を図っています。
なお、学術機関へ提供する際は、氏名や生年月日、住所等の個人を特定できる情報は削除し、匿名化した上で提供します。
(2)神戸市保健事業に係る研究倫理審査委員会
神戸市では、保健事業に係る研究を実施または協力をする際、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年3月23日文部科学省・厚生労働省・経済産業省通知)を踏まえた倫理審査を実施しています。