最終更新日:2024年8月6日
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2020年1月17日現在
須磨海岸は海水浴場としてはもちろん、砂浜や遊歩道も整備され一年を通じて市民の憩いの場として親しまれています。この遠浅の海を利用し、昭和35年から神戸市漁業協同組合が冬期閑漁期の事業として海苔養殖に着手。約2年間の試験研究期間を経て、須磨浦地区から本格的にスタートしました。
2014年7月に次の世代へと須磨の漁業をつなげていこうと「すまうら水産有限責任事業組合」が設立され、3年後の春、そこへやって来たのが高校を卒業したての大槻祐太さん(21歳)。若い力が今、須磨の漁業を支え、未来を担っています。
神奈川生まれですが、幼稚園に入る前に引っ越したのでほとんど記憶になくて、育ったのは群馬県伊勢崎市です。平野が広がっていて、周りには田んぼがいっぱい。海がないから「海の仕事がしたい」という気持ちがあって、漁師専門の求人サイトを見ていました。日本全国、いろいろな場所で求人はあったのですが、「すまうら水産」が会社として条件が良くて、職場環境も良さそうだったので就職を決めました。
神戸のことは知っていましたが、「須磨」という地域は聞いたこともなくて、画像で目にする神戸はポートタワーや大きな港、異人館、イメージとしては”オシャレなまち”。「僕には似合わないな、大丈夫かな?」と思いながら、初めてJR須磨駅で電車を降りたら、すぐそこに砂浜が広がっていてびっくり。「神戸にこんなところがあるんだ」と思いました。
自分で決めたので迷いはなかったです。でも、来てすぐに始まったのが、海苔工場で出来上がった海苔から異物を取り除く作業。海を見ながら仕事をすると思っていたので、「あれ?イメージと違う」と。実は僕が来たのは3月の中頃で、海苔の刈り取りも終わりの時期だったんです。そんなことも知らなくて(笑)。
4月1日から海に出ました。カレイやヒラメ、カサゴなどをとる「建て網漁」です。
午前2時に出港し、漁を終えたら5時頃に魚を市場へ持って行きます。帰る途中に翌日の網を入れて、港に戻ります。普段は8時から9時頃に仕事は終わりますが、大漁の時は終わるのが昼頃になる日もあります。
社員が十数人いるので漁に出る人もいるし、須磨の海開きの時期がくると、僕は海水浴場でパラソルや浮き輪、ボートなどの貸し出しの仕事をします。須磨に来た次の年から、潮干狩りも始まったので、4月末から6月初めごろまではその仕事が続きます。
神戸でサーモンを育てようという話があって、すまうら水産で始めることになったそうです。昨年から中心になってやらせてもらっています。何も分からない手探りの状態で、1年目は惨憺たるものでした。1日4回、生け簀まで餌やりに行くのですが、ちっとも食いついてくれなくて、毎日、何匹も死んでいき、網を持ち上げてスコップですくいあげる。そんなつらい仕事の繰り返しで、結局、去年4月に出荷できたサーモンは数十匹でした。
はい!だいぶ順調です。今年は餌やりに行くとブワーっと寄って来るので、餌のあげがいがあって、毎日楽しみです。
そうでもないです。バイクが好きなので休みの日には一人で、ぷらーっと走っています。僕が育ったのは海がない上に、山まで行くにも1時間以上かかる。そんな所だったので、すぐそこにある海と山に挟まれた道をバイクで走るなんて、ここでしかできない経験です。海に向かって走るときは、明石海峡大橋を走るのが気持ち良くて、淡路島の西側の海沿いを行ったり来たり。でも高速料金がかかるのでいつもというわけにはいかなくて、六甲山の山道をあちこち走って、北区のつくはら湖辺りまで行くこともあります。
交通の便の良さは最高です。僕の地元では電車1本逃したら30分待ちとかでした。JR須磨駅では5分、10分待てば次に電車がすぐ来るし、山陽電車もあるし、バスも便利だし、夜遅くなっても駅前にタクシーが待っているし…。街に遊びに出るのが好きならすごくいい環境だと思います。ありがたいのは、バイクで遠出するとき須磨インターがすぐそこにあることかな。群馬へ帰るときもバイクなので。
最近は会社の人たちと釣りをしています。須磨海岸では海水浴や潮干狩りができて、子どもが遊べるスポットがたくさんありますね。仕事でお客さんのお世話をしたり、イベントをしたり、けっこう楽しんでいます。須磨離宮公園のフィールドアスレチックは人気だと聞いていますが、さすがに僕はちょっと大人になり過ぎていて(笑)。
まだ彼女がいないのでそこまでは考えられませんが、ずっと須磨で暮らして、この仕事を続けていこうと思っています。今は、良い海苔が出来上がるのを見たり、サーモンが順調に大きくなっていくのを見たりするのが楽しみで、毎日が充実しています。