2024年度 大学発アーバンイノベーション神戸採択結果一覧

最終更新日:2024年10月15日

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一般助成型(申請順)

多様な地域資源を資材としたペレット堆肥の製造とその特性評価

代表研究者

菊川 裕幸(神戸学院大学現代社会学部)

交付内定額

2,916千円

研究概要

 家畜排せつ物利用を推進し、地域内で資源を循環させるためには、1)資源循環型畜産の推進、2)技術の開発と普及促進、3)消費者等の理解の醸成が重要である。本研究では、これらの課題の解決に寄与できるよう以下の3つの実験を設定した。
1)資源循環型畜産の推進は、一般財団法人神戸農政公社等と連携を図り、肉牛ふん尿を主資材とし、その消臭効果や肥料的価値を付加するために様々な地域の未・低利用資源を副資材として活用し、堆肥化を行う。堆肥についてはその特性を化学的に分析するとともに植物の栽培試験を通してその機能性や安全性を確認する。
2)技術の開発と普及促進は、製造した堆肥をペレット化し、農作業効率の向上を図る。JA兵庫六甲と連携し、農家での実装試験を行う。
3)消費者等の理解の醸成は、1)および2)で明らかになった知見をもとに、一般家庭や学校教育現場と連携し、利用促進に向け、ペレット堆肥の無料配布やリーフレットの作成を行う。

神戸港湾水域のCO2選択的直接回収技術

代表研究者

村上 遼(神戸学院大学薬学部)

交付内定額

3,000千円

研究概要

 現在、炭素循環技術における海洋中のCO2吸収・貯留技術として、海藻などの海の植物によって海底にCO2を吸収・貯留するブルーカーボンが主に挙げられる。しかし、ブルーカーボン生態系は環境変化に繊細であり、海水温の上昇や海水酸性度の変化によって、これらの生態系は容易に破壊される可能性があるため、ブルーカーボン生態系の保全に課題が残されている。申請者は、これまでに疎水性官能基もつアミン(アラルキルアミン)を用いる化学吸収法により、大気中のCO2のみを選択的に回収できることを見出している(Adv.Mater.Interfaces.2024,PCT/JP2022/002780)。ごく最近、申請者は新たに高疎水性アミン系高分子を開発し、CO2のみを選択的に吸収できる画期的なCO2吸収剤を発見し、海水から直接CO2を回収できることを見出している(特願2024-030458)。本技術はポリマー材質のCO2吸収剤を利用しているため、流出させることなく理論的に海洋中からCO2を直接回収可能である。そこで本技術を用いた実用化の実現を目指し、効率的な海洋直接回収技術(Direct Ocean Capture)のシステム化開発を行う。

バイオフィリック・デザインによる都市緑地の展開-多様な街路樹を生かしたLiving Nature Kobeを目指して-

代表研究者

大野 朋子(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)

交付内定額

3,000千円

研究概要

 本研究はバイオフィリック・デザイン(自然を感じるデザイン)の概念を用いて神戸市都心部に安心安全で特色ある都市緑化の展開を試みるものである。
 具体的には多種多様な街路樹の植栽が都市に訪れるあらゆる人々の心身に与える影響をアンケートおよび実測によって客観的に明らかにし、街路樹の多様な機能を効率よく生かした実装性の高い神戸のまちづくりを提案する。都市空間での様々な街路樹の樹種、さらに樹形や、色彩、葉や花が生み出す個別の効果について、季節や利用者の属性の違いを含め、修景や心地よさ、夏季の涼しさ(緑陰の効果)に焦点を当て明らかにする。都市空間におけるこれまでにない街路樹の可能性を発掘することで神戸市が推進するLiving Nature Kobeの試みをより高次なものにできる。都市空間特有の自然に対する快適さ、美しさの解明に加え、省管理にも考慮して居住者、来訪者すべての人々が都市に求める心地よく居続けたいと思う都市緑地計画の立案と実施に寄与するものである。

市民と医療者の協働による実用的な心不全症状マネジメントの開発

代表研究者

正垣 淳子(神戸大学大学院保健学研究科)

交付内定額

3,000千円

研究概要

 本研究の目的は、心不全患者と医療者が協力して、実用的な症状マネジメントを開発し、早期受診の促進や再入院率の低減を図ることである。これにより、神戸市在住の心不全患者が地域で安心して生活できる環境を作ることを目指す。
 神戸市は、高齢化に伴い、心不全患者が増加している。心不全は、症状の悪化と改善を繰り返す、入院率の高い疾患である。入院は患者の生活の質を低下させ、医療費の増加にもつながる。そのため、心不全が重症化する前のわずかな身体の変化(症状)を認識し、急激な増悪による緊急受診を減らすことが極めて重要ある。しかしながら、それは、当事者である患者ですら難しいことが指摘されている。これまで、知識提供や症状観察練習のような、医療者主導の症状マネジメント支援が行われてきたが、十分な効果は得られていない。それは、患者の視点が十分に取り入れられていないためと考えられる。
 そこで、本研究では、患者と医療者双方のニーズと意見を取り入れた、実用的な症状マネジメントを開発することで、心不全患者が安心して生活できる環境づくりを目指す。

湿潤バイオマス資源化のための新規高効率脱水装置の研究開発

代表研究者

鈴木 隆起(神戸市立工業高等専門学校機械工学科)

交付内定額

2,970千円

研究概要

 各家庭や各工場からの汚水は、下水処理工程において、固形物が十分除去された後、放流される。一方で、除去された汚泥(固形物)は、脱水機で乾燥させた後に、焼却処分されている。近年では、エネルギー問題の観点から、脱水後の固形物そのものや、他の廃棄物と混合して、燃料として利用する資源化の動きが活発化している。そのため、乾燥前の固形物は湿潤バイオマス(水分を含んだ生物資源)とも呼ばれている。国の“地球温暖化対策計画”にも、この湿潤バイオマスは、重要な再生可能エネルギー熱に位置付けられている。
 しかし、多くの場合、汚泥中に含まれる水分が多いことから、焼却処理する場合においても、汚泥自身で自燃できず、余分な燃料が必要となる。また、完全乾燥させてバイオマスとして利用する場合も、生産されるバイオマスの利用可能エネルギーよりも、乾燥に要するエネルギーが多いことから、環境負荷や経済的観点から、実用も進まない状況である。
 そこで本研究では、新規の高効率脱水技術に対する研究開発を実施し、焼却処理に必要なコスト削減は勿論、湿潤バイオマスの資源化につなげることを目指している。

“神戸最後の前方後円墳”の実態解明と持続的保全・活用方法の構築をめざした総合的研究

代表研究者

齋藤 瑞穂(神戸女子大学文学部史学科)

交付内定額

2,400千円

研究概要

 研究代表者が2023年度に採択された「“神戸最後の前方後円墳”の高精度3Dデジタル・アーカイブの構築とその戦略的活用」では、当初目的であった①西区金棒池1号墳の3Dデータ作成に成功し、標高値や墳丘の残存状況を克明に記録することができた。また、②草刈りをお手伝い下さり、あるいはたくさんの方が見学に訪れるなど、周辺住民の関心を呼び込むことに成功し、貴重な遺産を市民の手で守り継ぐ基盤も形成された(10月に成果説明会を予定)。
 ところが肝心の部分で課題が残った。精細な測量図は完成したが、古墳前方部の削平や浸食が著しく、古墳本来の規模が判明しなかったのである。墳形と規模は古墳築造当時の政治秩序を反映している可能性が高いが、現時点の成果ではあと一歩それに迫れない。ただし、一部分にせよ発掘調査を実施し、墳丘をめぐる濠が発見されればすぐに問題は解決する。
 そこで本研究では2023年度採択研究を発展させ、金棒池1号墳の墳形と規模の特定および損傷状況の把握を目的とした発掘調査を実施する。神戸地域の6世紀社会を高い次元で議論する足掛かりを作り、かつ、同古墳の意義を市民と広く共有する。

遠隔ロボット支援手術の通信遅延に対する手術手技への影響とトレーニング手法の探索

代表研究者

原 琢人(神戸大学大学院医学研究科腎泌尿器科学講座)

交付内定額

2,484千円

研究概要

 本プロジェクトは、遠隔ロボット手術が地理的制約を克服し、高度な専門医療を提供するための手段として注目される中、通信遅延が手術の安全性と精度に与える影響を克服することを目的としている。具体的には、5G環境下での通信遅延が医師の操作精度やエラー率に与える影響を評価し、標準化された遠隔手術訓練プログラムを開発することで、信頼性の高いエビデンスを作成することである。神戸大学、シスメックス、川崎重工、メディカロイドなどの神戸における産学連携の結晶であるhinotoriサージカルシステムを用いて、エミュレーターによるリアルな通信遅延環境を再現し、手術シミュレーターや膀胱尿道吻合の実物モデルを使用して訓練を行う。これにより、医師の操作精度向上、エラー率低減、操作時間短縮を図り、遠隔手術免許や資格認定に利用可能なデータを収集する。このプロジェクトを通じて、遠隔地の災害にも対応可能な安全な社会システムを構築し、地域医療の均質化を促進すること持続可能な医療インフラを整備を目指す。

人文・社会科学型(申請順)

北区を中心とした神戸市域における地域所在資料の保全と活用

代表研究者

井上 舞(神戸大学大学院人文学研究科)

交付内定額

600千円

研究概要

 本研究では、地域社会の変容によって滅失の危機にさらされている、文献資料を中心とした地域歴史文化資料を継承していくための実践的研究を行う。具体的には神戸市北区を主たるフィールドに設定する。その上で、①地域住民と協働しながら文献資料の調査・研究に取り組み、此を通して地域に残された文献資料を可能な限り地域の中で保管・継承していける手法を検討・実践する。②オールドタウン化しつつあるニュータウン地区の自治会保管資料を活用し、生活文化史の再構成と地域活性化を検討する。③近世、近代史料を活用した地理的歴史的空間の再構成と地域活性化に取り組む。④災害が多発する現代において、地域の歴史文化が被災地の心の復興に寄与することを踏まえつつ、発災時の地域歴史文化資料の被災を防ぐための方策として、官・民による資料の所在情報の共有と発災時の情報公開の在り方について検討を行う。

神戸市域におけるキリスト教関係史料の整理と観光活用

代表研究者

衣笠 太朗(神戸大学大学院国際文化学研究科)

交付内定額

2,000千円

研究概要

 この研究の主たる目的は、神戸市域におけるキリスト教関係史料の整理・調査・分析を実施し、そうした成果を神戸の観光事業の拡大に役立てることにある。
 この史料整理・調査事業の拠点は、神戸において150年余りの歴史を有するプロテスタント教会「神戸ユニオン教会」である。この教会は、ドイツ語圏出身者や、アメリカ、インド、オーストラリア、フィリピンなどの英語圏出身者の共通プラットフォームになっただけでなく、広く神戸市民にも開かれていたため、多文化社会神戸を育む場ともなった。最初の会堂は神戸開港直後の1871年に元町の明石町(現大丸周辺)に設立され、また1929年に設立された2つ目の会堂は現フロインドリーブとして知られている。現在は長峰台にある同教会には、非常に膨大なドイツ語・英語史料が保管されており、上記の歴史的・社会的な重要性から、その全体を整理し、分析する事業を早期に完遂することが望まれる。この事業では、ユニオン教会のみならず、神戸市域におけるキリスト教史の展開を調査し、そのために国外での調査などを実施する。本事業の前身は2022年度採択の大学発アーバンイノベーション神戸の課題であり、それを引き継ぐものである。

幼児期の⼦をもつ親が家庭内性教育を⾏っている現状と課題に関する研究

代表研究者

川内 惠美⼦(兵庫医科大学看護学部)

交付内定額

1,809千円

研究概要

 本研究の目的は、幼児期の子をもつ親の家庭での性教育の関心や家庭内で性教育を行うことに対する考えについて明らかにし、夫婦もしくはパートナー間での差異があるのか比較検討する。そして、夫婦もしくはパートナー間で子どもに対する家庭内での性教育について会話する場を持つことの効果を調査することである。本研究を行う理由は、子どもたちへの性教育は、時代の流れと共に大きく変革している。1990年代、性感染症や人工妊娠中絶の増加から性教育の必要性が唱えられ、2018年にUNESCOの国際セクシュアリティガイダンスが改訂し、低年齢の時期から自分の身体を理解し自ら命を大切に守っていくためにも、幼児期からの性教育の必要性が重視されるようになってきている。一方で、「保健師等による幼児等低年齢児の保護者に対する効果的な性教育方法に関する調査研究」(厚生労働省、 2021)では、性教育の必要性を感じている親が多いものの実践はできていないこと、さらに夫婦間で性教育に関する会話がなされていないことが問題点として考えられた。性に関する教育は人を育てるうえでの重要不可欠な部分であり、親が子に対し何事においても自信をもって教育できることにつながる。本研究目的を明らかにすることで、幼児と家族への性教育のあり方を検討するうえでの重要な示唆を得ることができる。

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