ホーム > 文化・スポーツ > 文化施設 > 谷崎潤一郎旧邸 倚松庵(いしょうあん) > 倚松庵の2階4.5畳 西の部屋
最終更新日:2024年9月30日
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そして、四月二十五日の晩に、貞之助たちや雪子に暇乞い(いとまごい)旁々(かたがた)、手廻りの物を運ぶために忍んで蘆屋へ訪ねて来たが、以前彼女の部屋であった二階の六畳に上ってみると、そこには雪子の嫁入道具万端がきらびやかに飾られて、床の間には大阪の親戚その他から祝って来た進物の山が出来ていた。(下巻37章)
作品では6畳となっているが実際には4畳半。1畳半の縁側がついている。4畳半に「進物の山」が並ぶのは無理がある。
六甲山脈を臨めるのは、この2階の西の部屋からだけであった。山の見える風景の<外へ向かって開かれた>雰囲気が、谷崎に<旅立ち>場面を書かせたのだろう。
作品の中にはあまり出てこない部屋であるが、その最終部で、妙子は祝福されない結婚への<旅立ち>、そして雪子はあり余るほどの祝福を受けてのそれ、ということが極めて対照的に描写されているのである。