妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針
妊娠前から、健康なからだづくりを
お母さんの健康と赤ちゃんの健やかな発育には妊娠前からのからだづくりが大切です。
若い世代の「やせ」が多いことなどの課題を受けて、10項目の指針が示されました。
- 妊娠前から、バランスのよい食事をしっかりとりましょう
- 「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと
- 不足しがちなビタミン・ミネラルを、「副菜」でたっぷりと
- 「主菜」を組み合わせてたんぱく質を十分と
- 乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムを十分に
- 妊娠中の体重増加は、お母さんと赤ちゃんにとって望ましい量に
- 母乳育児も、バランスのよい食生活のなかで
- 無理なくからだを動かしましょう
- たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう
- お母さんと赤ちゃんのからだと心のゆとりは、周囲のあたたかいサポートから
妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針リーフレット(PDF:1,198KB)
バランスのよい食事とは
主食・主菜・副菜を組み合わせた食事がバランスのよい食事の目安となります。
・炭水化物の供給源であるごはんやパン、めん類などを主材料とする料理を主食といいます。
・妊娠中、授乳中には必要なエネルギーも増加するため、炭水化物の豊富な主食をしっかりとりましょう。
- 不足しがちなビタミン・ミネラルを、「副菜」でたっぷりと
・ビタミン、ミネラルおよび食物繊維の供給源となる野菜、いも、豆類(大豆を除く)、きのこ、海藻などを主材料とする料理を副菜といいます。
・妊娠前から、野菜をたっぷり使った副菜でビタミン・ミネラルをとる習慣を身につけましょう。
・たんぱく質は、からだの構成に必要な栄養素です。
・主要なたんぱく質の供給源の肉、卵、大豆および大豆製品などを主材料とする料理を主菜といいます。
・多様な主菜を組み合わせて、たんぱく質をしっかりとりましょう。
- 乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムを十分に
日本人女性のカルシウム摂取量は不足しがちであるため、妊娠前から乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムをとるよう心がけましょう。
授乳中に、特にたくさん食べなければならない食品はありません。
逆に、お酒以外は、食べてはいけない食品もありません。
必要な栄養素を摂取できるように、バランスよく、しっかり食事をとりましょう。
きちんと食べて適切な体重まで増やす
- 妊娠中の体重増加は、お母さんと赤ちゃんにとって望ましい量に
妊娠中の適切な体重増加は、健康な赤ちゃんの出産のために必要です。
不足すると、早産やSGA(妊娠週数に対して赤ちゃんの体重が少ない状態)のリスクが高まります。
妊娠前の体格(BMI)を知っていますか?
BMIとは、身長と体重から算出される肥満や低体重(やせ)の測定に用いられる指標です。
BMI=体重(キログラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)
例:身長160センチ、体重50キログラムの人のBMIは?
⇒50(キログラム)÷1.6(メートル)÷1.6(メートル)=19.5
妊娠前の体格*2 |
体重増加量指導の目安 |
低体重(やせ):BMI18.5未満 |
12~15キログラム |
ふつう:BMI18.5以上25.0未満 |
10~13キログラム |
肥満(1度):BMI25.0以上30.0未満 |
7~10キログラム |
肥満(2度以上):BMI30.0以上 |
個別対応(上限5キログラムまでが目安) |
妊娠中の体重増加指導の目安*1
*
1「増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも十分ではないと認識し、個人差を考慮したゆるやかな指導を心がける」産婦人科診療ガイドライン産科編 2020 CQ 010より
*2日本肥満学会の肥満度分類に準じた。
大事な栄養素「葉酸・鉄・カルシウム」
「葉酸」は妊娠してからとればいいの?
妊娠前から妊娠初期にかけて、葉酸をとることで、赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクが低減することが知られています。
この時期は食品だけでなく、サプリメントも活用し、付加的に1日あたり400マイクログラムの葉酸をとることが望まれます。(ただし、サプリメントのとりすぎには注意)
ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、枝豆や納豆、いちごなど
葉酸は水に溶けやすく熱に弱いので、食品から摂取する際は、生で食べる、蒸すなどの調理方法がおすすめです。
「鉄分」不足っていわれるけど…
女性のからだは月経や妊娠で多くの鉄分を必要とします。
鉄分不足は貧血や疲れやすい体になるだけでなく、赤ちゃんに十分な酸素や栄養を届けられなくなってしまうので、積極的にとりましょう。
レバーや赤身の食肉と魚肉、あさり、大豆、ひじきなど
ビタミンCを多く含む緑黄色野菜と一緒に食べると鉄分の吸収を助けてくれます。
逆に、コーヒー・紅茶・緑茶に含まれるタンニンは、鉄の吸収を妨げることがあるので、食事中や食後すぐに飲むのは控えましょう。
「カルシウム」とらないとどうなるの?
カルシウムはからだの機能維持や調節、赤ちゃんの骨や歯をつくるなどの重要な役割があります。
妊娠期や授乳期に関わらず、若いうちからしっかりとることで、将来の骨粗しょう症予防にもつながります。
牛乳やチーズなどの乳製品、緑黄色野菜、豆類、ちりめんじゃこやイワシなどの小魚など
カルシウムの吸収をサポートするビタミンD(きのこ類、サケ、サンマなどに多く含まれます)と合わせてとるとよいでしょう。
おいしく「減塩」、どうしたらいい?
20~30歳代女性は、それ以上の年齢層と比較して、外食や加工食品からの食塩の摂取が多いことをご存じでしょうか?
食塩のとりすぎは、高血圧、脳梗塞や心筋梗塞などを起こしやすくします。
しかし、食品や料理そのものを見て、含まれる食塩の量を把握することは難しいので、栄養成分表示などを活用しましょう。
妊娠をきっかけに、家族そろって、食塩を控える習慣づくりをし、うす味に慣れておくと、赤ちゃんの離乳食や幼児食をつくるときにも役立ちます。
妊娠中の食中毒に注意
妊娠中は免疫機能が低下して、リステリア菌やトキソプラズマ原虫などに感染しやすくなり、赤ちゃんに影響が出ることがあります。
食中毒予防のため、日頃から野菜や果物は食べる前によく洗い、魚は新鮮なものを選び、肉は十分に加熱し、生食はやめましょう。
これからママになるあなたへ(食べ物について知っておいてほしいこと)(PDF:1,656KB)
魚に含まれる水銀
魚類の一部には食物連鎖を通じて高い濃度の水銀が含まれているものがあり、赤ちゃんに影響を与える可能性が報告されています。
しかし、魚は栄養バランスのよい食事には欠かせません。
一部の魚に偏って毎日たくさん食べることは避けましょう。
サケ、アジ、サバ、イワシ、サンマ、タイ、ブリ、カツオ、ツナ缶などは安心して食べられます。
これからママになるあなたへ(お魚について知っておいてほしいこと)(PDF:2,330KB)
つわりのときには
空腹時に気持ちが悪くなることが多いので、食事の回数にこだわらず、食べ慣れたものや、好みに合うものを少しずつ食べるようにして、空腹にならないようにしましょう。
おなかが大きくなったら
特に妊娠後期になると、胃が圧迫されて食事が思うようにとれないことがあります。
その場合は1日3回にこだわらず、何回かに分けて1日に必要な食事量をとるようにしましょう。