最終更新日:2024年2月19日
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ウイルスが原因となって肝臓に炎症が起こり発熱、黄疸、倦怠感、吐き気、腹痛などの症状が起きる疾患の総称です。日本でもっとも多い肝臓病は肝炎ウイルスによっておこるウイルス性肝炎です。
原因ウイルスの種類
肝炎検査と助成制度
C型肝炎特別措置法に基づく給付金受給のための手続き
肝炎と付き合いながら働く方へ
種類 |
感染経路 |
潜伏 期間 |
ワクチン の有無 |
慢性化 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
A型 |
経口感染
|
2~4週 | あり | なし |
ウイルスに汚染された飲食物の摂取により感染するため、飲食の前にしっかりと手を洗い、食品に十分に火を通すことで予防できます。 まれに劇症化し、死に至ることもあります。 A型肝炎の流行地域に渡航する場合や、同居者やパートナーが感染した場合は、ワクチン接種を検討しましょう。 |
E型 | 経口感染 | 2~8週 | なし | なし |
A型肝炎と同様、汚染された飲食物により感染するため、手洗い、飲食物の加熱が重要です。 まれに劇症化し、死に至ることもあります。特に妊婦が感染した場合は、劇症化する率が高いため適切な予防が必要です。 |
B型 |
血液感染 | 1~6ヶ月 | あり | あり |
主に感染した人の血液が体内に入ることで感染します。そのため注射器の共用、輸血、臓器移植、母子感染、性行為などで感染します。血液に直接手を触れない(手袋を使用する)、かみそりなどの共用をしない、性行為時にはコンドームを使用する等の予防があります。 |
C型 |
血液感染 | 2週~3ヶ月 | なし | あり |
B型肝炎と同様、血液や性行為により感染します。 感染すると約70%のヒトがC型肝炎ウイルスの持続感染者※となり、放置すると慢性肝炎や肝がんに進展する場合があるので、適切な治療が必要です。 |
D型 |
血液感染 | 1~4ヶ月 | なし | あり | B型肝炎の持続感染者に感染、またはB型肝炎ウイルスと同時感染することで感染が成立します。このウイルス単独では感染をおこしません。 |
健康な人が初めてB型、C型肝炎ウイルスに感染すると、一部の人は症状が落ち着いた後も体内にウイルスが残り、感染が持続している状態となります。このことを持続感染者(キャリア)と呼び、肝炎による肝臓の障害が持続して起こるため、進行すると肝硬変や肝がんの原因になるため適切な治療が必要です。またかみそり等の共用をしない等、周囲の人が感染しないための予防も必要です。
B型及びC型肝炎は血液を介して感染する病気ですが、握手や隣にすわる、同じお風呂を使う、一緒にご飯をたべるといったことでは感染しません。思い込みや過度の危機意識をもって行動してしまうことは、肝炎ウイルス感染者やその家族に対する偏見や差別につながり、人権上大きな問題となります。差別や偏見をなくすためには、予防に関する正しい知識を持つことが大切です。
感染予防に関する関連リンク
・日常生活の場でウイルス肝炎の伝播を防止するためのガイドライン(外部リンク)
・保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン(外部リンク)
・高齢者施設における肝炎対策のガイドライン(外部リンク)
・安全・安心な歯科治療を目指して B型肝炎キャリアですが診察してもらえますか(外部リンク)
ウイルス性肝炎(特にC型肝炎)をそのまま放置しておくと、慢性肝炎から肝硬変を経て肝がんに進行することがあるため、検査による早期発見、早期治療が大切です。
神戸市では肝炎ウイルス検査(B型肝炎抗原検査とC型肝炎抗体検査)を公費で受けることができます(満20歳以上で、これまでに検査を受けたことがない方が対象です)。
また、兵庫県にはB型・C型肝炎ウイルスに感染した方を対象としたさまざまな費用助成制度があります。
現在、国では特定C型肝炎ウイルス感染者救済特別措置法に基づき、出産や手術での大量出血等の際に特定の血液製剤を投与されたことによりC型肝炎ウイルスに感染したことに対して、給付金を支給しています。
給付金の支給を受けるためには、2028年(令和10年)1月17日までに国を相手とする裁判を提起する必要があります。詳しくは下記の厚生労働省HPをご確認ください。
※2022年(令和4年)の法改正に伴い、給付金の請求期限が2028年(令和10年)1月17日までに延長されました。また、劇症肝炎(遅発性肝不全を含む)に罹患して死亡した方への給付金の額が引き上げられました。
ウイルス性肝炎は、早期に発見し適切な治療を行えば通常の業務を遂行できる可能性のある病気です。しかし職場の理解を得られず、業務による多忙により治療の継続が困難となることが少なくありません。仕事と治療の両立を図るためには、病状や治療計画を把握し、職場の理解を得て必要に応じ業務を調整することが大切になります。
病院で確認する内容
・治療期間はどのくらいなのか(治療中、経過観察中の通院の頻度など)
・どのような副作用、合併症があるのか、生活や仕事の上でどのような点に気をつければいいか
・職場で配慮が必要なことはあるか(業務内容や勤務体制の配慮など)
職場の上司や管理者に相談する内容
・治療期間、治療計画の見通し、通院の頻度など
・職場で配慮が必要な点(勤務体制、業務内容など)
・利用できる休暇、休職制度があるか
B型肝炎やC型肝炎は、感染症ということもあり、職場に病名を伝えたことにより差別を受けたり、偏見の目で見られてしまうことが少なからずあるようです。実際には主に血液によって感染するため、一緒に仕事をしているからといって感染することはありません。そのため、「直属の上司のみ」、「上司と人事担当者」など範囲を決めて伝えている方もいます。
大切なのは病名を伝えることではなく、配慮してほしいことや仕事に対する気持ちを伝えることです。どのように職場に伝えていけばいいか、ということについても下記のような窓口で相談することができます。
産業保健総合支援センターHP治療と仕事の両立支援について相談窓口のご案内(外部リンク)
兵庫医大肝疾患センターHP相談窓口のご案内(外部リンク)
公的年金制度には、主に自営業者などが加入する国民年金と、会社員などが加入する厚生年金があります。これらの制度の加入中に病気やけがで障害が残った場合には、国民年金から「障害基礎年金」、厚生年金から「障害厚生年金」が支給されます。
また認定の対象となる条件は、「初診日に被保険者であること」、「保険料の納付条件をみたしていること」、「一定の障害の状態にあること」です。「一定の障害の状態」とは、「慢性かつびまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症」、「肝硬変症に付随する病態(食道、胃などの静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎、肝がんを含む)」です。詳細は下記の厚生労働省、日本年金機構のPDFファイルをご覧ください。
障害年金について(PDF:382KB)
「肝疾患による障害」の認定基準(PDF:663KB)
療養のため長期的に仕事を休むことになると、給付要件を満たせば加入している協会けんぽまたは健康保険組合から傷病手当金を受け取れる場合があります。詳しくは、加入している健康保険及び協会けんぽにお問い合わせください。
B型及びC型ウイルス性肝炎患者が、将来、肝がんや肝硬変といった重篤な病態へ進行することを防ぐ観点から上記のような事業が行われています。患者の世帯所得に応じて、インターフェロン治療、インターフェロンフリー治療及び核酸アナログ製剤治療費(保険適用のものに限る)について最大1年間、公費助成を受けることができます。自己負担限度額は月額10,000円(世帯の市民税額が235,000円以上の場合は20,000円)であり、それ以上の医療費は公費負担となります。