最終更新日:2024年4月26日
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司会:
それでは、ただいまより4月2回目の市長定例会見を始めさせていただきます。
市長、よろしくお願いします。
久元市長:
よろしくお願いいたします。私から今日お話を申し上げたい案件は、規制・行政手続の見直しです。
規制・行政手続の見直しを行ってきましたけれども、募集を締め切りまして、そして検討を行い、第1弾、最初の検討結果がまとまりましたので、御紹介を申し上げたいと思います。
規制あるいはこの行政手続は、国のほうは比較的、ずっと以前から有識者会議をつくったり、検討委員会をつくったり、外部の方々の意見を聞きながら見直しをするということが行われてきたわけですが、自治体においてはあまりそういう動きは、そんなには行われてきませんでした。しかし、特に神戸市のような幅広い権限を有する自治体は、たくさんの規制を行っておりますし、様々な行政手続があります。これらが時代の変化に適合しているのか、あるいはかなり煩瑣なものになっていないか、また市民や民間事業者の皆さんに過大な負担を受けていないか、そういう観点からの見直しが必要ではないかと従来から考えてきました。
私自身も直接市民や民間事業者の皆さんから、個別にこんなすごい規制をやって大変困っていますということを時々聞くことがあります。最近もあります。そういうことから、直接市民や民間事業者の皆さんから、困っている事例、あるいは不適切な事例について意見を寄せていただこうと。そういうことで、去年の8月から受付窓口をまずつくりました。統一的な受付窓口をつくって、非常に簡単にフォームに入力をしていただければ、市役所のほうにこれが伝わると。そういう受付窓口を一元化いたしまして、いただいた意見については規制・手続見直しチーム、有識者の方々と、それから行政書士をはじめとする士業の方々に検討をしていただいた。そして所管部局に検討をお願いしました。その上で、この改善をするとしたらどういう内容にするのかという、そういう作業を行うこととしてきました。
これまで、この受付窓口にいただいた意見は267件でありまして、267件の中には、まさにこの見直しの対象になっているもの、これが151件、それから具体的な提案ではないけれども、やはり情報提供を各局にしておいたほうがいいというものが96件、あるいは個別の個人的な苦情や要望にとどまるもの、これが20件であります。この151件につきましては、これはやはり検討しなければいけないということで、各局と相談をしながら見直しの作業を行っているところです。
この見直しの提案の内容ですけれども、暮らし、子育て・教育、福祉・医療など、行政の各分野にまたがっているわけですが、例えばこの暮らしの分野では、区役所の窓口のウェブ予約の導入などもっとIT化を進めるべきだという、そういう御意見があります。あるいは、福祉サービスとか医療費助成の申請手続が複雑で面倒で、もっと簡素化をすべきであるというような御意見もそれぞれのサービスごとにありました。また、規制の提案では、まちづくり、あるいは農業・農地のところが多くなっているんですけれども、特に市街化調整区域における開発許可や農地転用などについての規制の緩和を求める意見などもあったわけです。
そして、この151件、検討しているわけですけれど、このうち28件につきまして検討結果がまとまりましたので、今日は個別に説明をさせてはいただくことは省略をさせていただきますが、具体的にこの28件については、資料を提供しております。そこの中で、代表的な事例を1つだけ御紹介をさせていただきますと、それが障害福祉サービスの事業所の指定申請という手続です。グループホームなどの障害福祉サービスの事業を運営するためには、これは法律に基づく手続ということになりますが、市が条例で定める人員基準、設備、運営基準に適合しているかどうかを審査して、そしてその上で適合していると市が判断すると指定を受けることができる、こういう手続になっているわけです。
神戸市は、この審査を迅速に行うという観点から、事前面談というのを行っていました。これは電話で事前面談の予約の電話を入れまして、こういう障害福祉施設の開設を予定していると。それで指定の申請をしたいわけですけれども、事前に面談をお願いしたいということで、全て事前面談をした上で正式な申請をすると、こういう手続になっているわけです。これは審査をスムーズにするということが本来の目的であったわけですが、しかし、電話を入れてもなかなか担当者との間で事前面談をすることがなかなか難しいと。もう相当この事前面談の日自体が先になってしまって、予約が大分先になってしまって、なかなか手続が先に進まないということがこの提案募集の結果明らかになってきました。
そこで、見直しといたしまして、実際に先ほどの見直しのアドバイスをいただいている、特に行政書士の皆さんからも御意見があり、一律に事前相談をするのではなくて、希望に応じて面談をするということに変えたほうがいいのではないかと。そして事前面談を希望しない場合は、もう書類の審査だけにすると。そしてオンラインで日程を確認でき、予約も可能な受付システムの変更をしていく、そういうシステムを導入するという案が出ました。
その見直しを踏まえて、この一律の事前面談というのをやめたところ、指定までの期間を最大3か月短縮することができています。事前面談の希望制への移行というのは、2月から既に導入をして、そういう3か月短縮という成果が出ているということで、オンラインでの予約受付は今年度前半に導入することを予定しております。これが1つの例です。
あと、それ以外にも、例えば里帰り助成金の申請手続を簡素化してほしいと。これに対して今、電子申請の導入を検討しております。
あと、精神通院医療の自立支援医療の受給者証の申請手続を電子化してほしいと。これは今年度に既に導入しているe-KOBEですね、神戸市スマート申請システムでの申請受付を開始する予定です。
あと、市街化調整区域の規制緩和ですね。神戸市は里山地域への移住定住を促進はしているわけですけれども、やっぱりそういうことを政策的に行っているのであれば、規制をもっと緩和してほしいというような要望が幾つかあります。これはもともと市としてもそういう認識を持っていて、7回にわたり規制緩和を実施しておりますので、さらに提案を踏まえて、今年度前半に住宅建築手続の期間短縮を予定しております。
あと、病院に関する防災安全の規制として、病室の窓を掃き出し窓にすると、一番下まで床がある窓にするという火災予防条例の規定がありますけれども、これを見直してほしいということです。これはやはり、病室からバルコニーに出て避難をする際に、病院ですから、なかなか体が自由に動かない方もいらっしゃいます。そこはスムーズに避難できるように、こういう規制をしているわけですけれども、そういう要請を受けて、有識者会議を設け、そこで客観的に調査分析を行い、結果を踏まえた見直しを検討するということにしております。
これは提案をいろいろいただいて、そして見直しをするということですけれども、やはりプッシュ型というんでしょうか、やはりある程度、市役所の規制をピンポイントで見直すということが必要ではないかと。そういう意味からいうと、この規制改革にアドバイスをいただいた方の中からお1人と、他から2名、行政手続に大変詳しい、規制と行政手続に詳しい3名の方を規制改革アドバイザーとして、4月1日から委嘱をすることといたしました。
顔ぶれは配付資料の中に掲載をしておりますが、行政書士3名の方を規制改革アドバイザーとして1年間委嘱をして、専門家視点で主体的に、御自身の判断で、これは相当時代遅れです、これは不合理です、これは相当面倒です、ICTを、DXを使えばもっと簡単にできるはずです、そんなアドバイスをいただいて、そして、実際に規制や手続を所管している各部局との間でディスカッションをしっかり行い、その間を企画調整局のほうが事務局になって調整をして、具体的な改革に結びつけていきたいというふうに考えております。市民ニーズや職員の負担軽減をさらに進めるという上で、そういう規制改革、行政手続の見直しというのは不可欠だというふうに考えております。
改めて言うまでもありませんが、行政ニーズはどんどん増えていきます。新しい仕事が次々に出てきます。かといって、この人口減少時代において、職員を増やすということはなかなかできません。限られた職員でより効率的に仕事をし、仕事の生産性を上げていくためには、漫然とこれまで行ってきているような仕事を見直す。その中には規制や行政手続というものがあって、これを見直しして、簡素化をしていくということは、市民の皆さんや民間事業者の皆さんの負担を軽減するとともに、それだけではなくて、職員の皆さんの負担も軽減するということにもつながっていくというふうに私は確信しております。
今度、この4月から規制改革アドバイザーの先生方、3人の皆さんと、先日も直接意見交換いたしましたけれども、行政の手続、大変よく御存じです。この知見をいただきながら、先ほど申し上げましたような見地、目的を持って規制・行政手続の見直しを行っていきたいと考えております。
私からは以上です。
記者:
冒頭でもおっしゃっていただいたと思うんですけど、国ではそういう規制・行政手続の見直しというのは行われてきていると思うんですけども、自治体ではあまり行われてこなかったと。その背景といいますか、漫然とという言い方か分からないんですけど、その背景として、どのような事情があるとお考えですか。
久元市長:
そこはちょっと正直よく分からないですけれども、多分、市民や民間事業者の皆さんからそういう声は上がらないのではないかと、上がってはこなかったのではないかということが1つで、ここから先は職員の皆さんには怒られるかもしれないけれども、実際に許可や承認を受ける民間事業者の皆さんからすれば、内々不満に思っていても、許可をする人はすぐ近くにいるわけですから、余計なことを言うと、職員の皆さんにはそんな気持ちはないと思うんですよ、職員の皆さん。じゃあ、そんなことはないと思うけれども、やっぱり余計なことを言うと不利益を被るのではないかと。特に距離が近いですから、自治体の場合は。距離が近いですから、なかなか言いにくいのではないかと。想像です。職員の皆さんから違うというような意見が出てきたら、そこは、局に意見を聞きますと違うという声が出てくるかもしれません。私は何となくそういうふうに思っています。
国のほうは遠いですよね、相当、民間事業者と。ですから、割合にばんばか出てくるわけです。あるいは業界団体もあります。そういういろんな業界の行政に対する提案や不満を取りまとめる業界団体というのはそれぞれ業界ごとにあって、この業界団体というのは相当強力で、いろんな意見をばんばん言うと。やっぱりそういう声に政治家側も応えて、外部の有識者の意見を聞いて、規制改革を行うと。これはずっと行われています。古くは中曽根民活とか、これは、あるいはその前の土光臨調、相当古い話ですけど土光臨調、行政改革をしていた土光臨調、中曽根康弘総理の、中曽根総理の口癖はディレギュレーションということを口癖でおっしゃっていましたね。それから、特にその後、小泉内閣のときにも、かなりこの規制改革のいろんな会議が立ち上がって、行われていました。安倍内閣のときもそうだったと思いますね。そういう形で、国においては相当行われてきました。自治体ではなかなか行われてきていなかったので、よく分からないですけれども、なかなかちょっとそういう許可をする側との距離が近いということも、ひょっとしたらあるのかもしれません。
記者:
すみません、際どい質問ですみません。その改革を行っていく上で、ちょっと不勉強で申し訳ないですけども、恐らく国の定めたルールに従ってやっている、移管事務としてやっている部分もあるだろうし、自治体として判断してカットできる部分もあると思うんですけど、そういうところを適切に、ここは変えられる、ここは変えられないというのを判断するための士業の方々のチームということですか。
久元市長:
そうです。それで実際に提案をいただいて、士業の方々、それから大所高所からは、学識経験者の方にも入っていただきました。大所高所の、どういうやり方でこれを進めたらいいのかというアドバイスもいただいて、実際にこういうやり方を取ったわけであります。
記者:
その中で、今回新しく3名の方を行政書士として、アドバイザーとして入っていただくということですけど、この方々は、例えば一般の行政書士の方々の中から、例えば、特にその行政手続に詳しいとか、そういう方を選んだとかというところはありますか。
久元市長:
そうです。この方々のうち1人は、この3月までの審査にも入っていただいていたわけですよね。お1人を入っていただいた方の中から選定をさせていただきました。私も直接、前にも2回お会いしましたけれども、大変お詳しいというのがよく分かりましたし、それから、国の規制改革で、私もいろんなヒアリングを受ける被告席に座っていたことは何回もあるんですけれども、ようこんなむちゃを言えるなというような有識者の方もいらっしゃいます。民主党政権のときには事業仕分というのがあり、そのときに私は被告席におりましたので。むちゃくちゃなことをおっしゃるような方もいらっしゃいましたけど、やっぱりそんなことは全然なくて、やっぱりきちんと制度のことを理解していただく、また、行政の実務のことも分かっていただき、しかし、その上で、やっぱりおかしなものは直していこうという、非常に前向きな改革マインドを持っておられる方々で、大変、これまでも助けていただきましたけれども、今後、プッシュ型の規制改革をやっていただきます。大変期待をしております。
記者:
今、対応予定とされています区役所の窓口ウェブ予約導入、現在ももうウェブ予約をしているところもあるということですけども、やはりこれというのは、もう既にやっているところでは、結構職員の方からも、このウェブ予約というのは便利というようなお声というのは上がっているんでしょうか。
久元市長:
便利というふうに聞いております。導入をしたところは、まだ一部ですから、これを広げることとしています。
記者:
例えばほかの、これから順次このウェブ予約を開始していくような区役所さんの職員の方からも、やはり期待の声というのは上がっているんでしょうか。
久元市長:
ウェブ予約一辺倒ではないと思っておりまして、そもそも区役所に来なくてもいい、例えばたくさんの方々が、住民票の写しとか、それから戸籍抄本とか納税証明書を取るために区役所に現実に来られていて、証明書発行コーナーなんかもあるわけですけども、そういう定型的な事務はマイナンバーカードを取っていただいて、コンビニで取っていただければ済むわけです。そういうふうに、そういう定型的な手続は区役所に来なくてもいいようにしていくということが基本で、来られる方は、やっぱり個別の具体的な相談があると。例えば、生活支援を受けたりとか、それから、子供さんの発達障害の相談だとか、これは区役所ではありませんけれども、個別の納税に関する相談だとか、国民健康保険の保険料が今すぐ払えないといったような相談とか。そういう個別の相談は、やっぱり来ていただく必要があるし、来ていただいたほうがいいわけですね。もちろん、オンラインで相談するというような方法に改善することもあり得ますけれども、実際にそういう方々を対象としたウェブ予約というのは有効だというふうに思います。
記者:
ありがとうございます。対応検討中の中には、さらにちょっと職員さんの、ちょっと、負担がちょっと増えてしまうような項目などもあるかと思うんですけども、それはやはり、そこの相補性というのが取れるかどうかというので今、対応の検討中というようなところでしょうか。
久元市長:
対応、これ、まだごく一部ですから、28件ですから、これから対応するものは非常に多岐にわたっていますけれども、できるだけ、先ほども申し上げましたように、この大きな目的は、市民や民間事業者も楽になる、職員も楽になる、そういうウィン・ウィンの関係というか、双方にとってメリットがあるような方向を目指したいというふうに思っております。ですから、このことによって職員の負担が増えるというような見直しは、できるだけ避けるのがいいのではないかというふうに思っています。
記者:
両方どちらも、利用者も職員の方も、どちらも最終的にはウィン・ウィンの状態にというところを目指していくという形で。
久元市長:
そうです。
記者:
分かりました。
久元市長:
ただ、実際の職員の皆さんからの声は、今、目の前の仕事をやっていると。そこでかなり忙しくて、この見直しというのは新たな、新しい仕事になるわけですね、ある意味で。新しい仕事をさせるのかという声も、直接耳に来るかどうか分かりませんが、やっぱりあるわけで、そこは何とかこの新しい、いい仕事かもしれないけれども、これを今、徹底的に議論して見直せば、結果的にはもっと楽に仕事ができるということをぜひ職員の皆さんに理解をして、得心をしていただきながら、改革を進めていくということが大事ではないかと思っています。
記者:
今回、全部で123件見直し提案があって、そのうち、すいません。151件あって、そのうち28件、今回公表されたということですけども、この優先順位といいますか、先に28件をやられた基準ですとか理由があれば教えてください。
久元市長:
基準とか理由とかは特にないんですけれども、やはりそんなに時間をかけずに解決方策が見いだせるようなものを、まず28件、これは第1弾です。ですから、今後第2弾、第3弾ということで、できるだけ早く、全て残ったものについての方向性を見いだしていきたいというふうに思います。同時に、検討した結果、提案の内容は分からないでもないけれども、やはり現行の手続や規制というのは維持することが適当だという結論になるものもあり得るだろうと思っています。
記者:
ありがとうございます。その現行の手続とか規制を維持するほうがいいというものは、今回の見直した28件の中には含まれてはないですか。
久元市長:
いや、あると思います。そこは一覧を配っているので、また後で御覧いただきたいと思います。何件かあったと思います。
記者:
あと、個別の事案になってしまうんですけども、例として挙げていただいた障害福祉サービス事業所の指定申請についてなんですけども、今回、事前面談を希望制にしたと。これによって最大3か月、指定までの期間を短縮できるというメリットがある一方で、逆に、なくしたことによるデメリットといいますか、弊害とかがもしあれば教えてください。
久元市長:
基本的にはそんなに大きな弊害はないのではないかと思いますが、事前面談を希望しないということは、書類審査だけで通るだろうと思って希望しないということだと思うんですが、実際に書類審査に入ってみたら、やっぱりいろんな不備があったりして、チェックをしてみると、よくよくお話を聞いてみなければいけないという事例が出てくるかもしれません。そうすると、その場合には、実は最初に相談しておいたほうがよかったというケースが出てくる可能性はあります。可能性はありますが、一律の事前面談を義務づけていることによる弊害のほうが大きいというふうになったわけですけれども、この士業の方々からは、あるいは直接担当している監査指導部のほうはそういうふうに判断したということで、こういう改革というのはやっぱり試行錯誤の面がどうしてもあります。やってみて、やってみた上で、またもし弊害が大きいということであれば見直すことは考えたいと思いますけど、全体として見れば合理的な改革の方向性かなと思います。
記者:
3月も伺っていたんですけども、明石市との関係についてです。昨年10月の議会で、市長、神戸市と明石市にまたがる玉津大久保線の新規着手が必要というふうに答弁されています。実際、今年度の当初予算案にも設計費などとして4,500万円が計上されています。これまで明石市のほうから早期着手の要望というのがずっとあったと思うんですけれども、なぜこの時期に着手する考えを表明されたのか教えてください。
久元市長:
これは、事務的にはいろいろと道路部局同士は相談をしていたと思うんですけれども、非常に大きな事業費がかかる重要な路線です。この重要な路線を、市内の中で優先順位を考えたときには、事務的にはこれは非常に大きな判断を要するという観点から見たときに、事務的にこれに踏み切ることができるのかどうかということについては、迷うところがあるという状況が続いてきたわけですし、非常に大きなプロジェクトですけれども、やはりトップ同士の間では意思疎通が全くできない状況が続いてきたわけです。
それが、丸谷市長が就任されて、状況が大きく変わりました。対立する構造ではなくて、隣の、神戸市も含めて周辺の市とは連携協力してやっていこうと、こういう姿勢を示されて、私のところにもお越しになりました。ぜひ、隣同士なんですから胸襟を開いていろんな課題を相談し、そして前に向かって進んでいこうということになり、私も何回かお会いいたしまして、そういう中で、この玉津大久保線も、明石市として非常に重要な道路なので、神戸市さんと一緒にこれを進めていきたいと思っております。ぜひ神戸市域についてお願いしますというふうなお話もありましたので、ですから、この事務的な調整の上に大所高所の判断あるいは連携もできるようになったということで、市長が代わったということが一番大きな要因だと思います。
記者:
ありがとうございます。市長が代わったということが一番大きいということなんですけど、それまで、前の泉房穂市長のときはトップ同士の意思の疎通がなかなかできない状況であったけれども、丸谷市長になってからは対話の路線になったため、今回事業として進むことになった点が大きいということですね。
久元市長:
そうです。
記者:
それに関連してなんですけれども、3月の会見のときに、圏域全体で発展することが大切で、前の泉市長とは共通認識がなかなか持てなかったけれども、丸谷市長とは持てているというふうに市長は説明されておりまして、今おっしゃっていたように、市長が代わったことが大きいというふうにおっしゃっていましたけれども、自治体の連携というのは首長同士の関係に左右されるものなのかどうか、これは総務省の自治行政局長だった経験も踏まえてお答えいただければと思います。
久元市長:
まず避けなければいけないのは、単に波長が合うとか気が合うとか、そういう要素というのはやはり好ましくないと思います。しかし、全く誰が市長になっても同じように連携協力をしなければいけないということであれば、トップを選ぶ意味はないと思います。やはり隣同士が、まず地方自治について共通の価値観を共有できるということは非常に大きな要因ではないかなと思っておりますし、また、連携協力することの意義や必要性ということについての認識も共有するということも非常に大事だと思うし、そういうことが前提に立って、この隣同士の相互にまたがる圏域というものを、それぞれの市民の皆さんの意見を聞きながらそれぞれが市政運営しているわけですけれども、そういうことを踏まえながら胸襟を開いて議論をし、フランクに話し合うことができるような関係を構築すること、これはまさにトップ同士の関係だと思うんですけども、そういうことによって規定される部分もあって、それはトップが代わることによってそういう関係が変更するということはあり得るわけで、そういう関係が変更することによって個別の事業が、帰趨が変わってくるということは、これはあり得ることだと思います。そのことが悪いというふうには思わないです。
記者:
ありがとうございます。最後に、これから明石市との連携が進むことで、神戸市のほうが中心となって圏域で人口を増やしていくことなど、何か新たな対策とかで考えられているものがもしあれば、教えてください。
久元市長:
圏域全体で人口を増やすということについて丸谷市長と議論したことはありません。今、明石市は人口が現時点では増加をしている、神戸市は減少しているということは事実ですけれども、最近も、全国の4割の自治体が消滅する可能性になっていると。我が国全体の人口が2008年をピークに減少しているということを考えたときに、やはり、この人口減少ということを真正面から見据えながら、それぞれの都市経営のありようということを考えていかなければいけないんだろうと思っております。
神戸市は、神戸市内あるいは周辺の明石市も含めて、周辺の地域に対して雇用機会を提供し、あるいは高度医療も含めた医療機会を提供し、様々なアートやスポーツの機会というものも提供をしておりますし、また、港湾をはじめとする物流、人や物の流れのネットワークの中心的な位置にあるわけですから、そういう意味で周辺の圏域に対しても貢献をしていっているというスタンスはこれからも取り続けていきたいというふうに思います。
記者:
今日、ポートタワーのリニューアルオープンがあって、そこでの御挨拶でもおっしゃられていたと思うんですけれども、神戸市にとって、ウォーターフロントエリアがどういう存在というか、観光客を呼び込む上でどういう場所であるかであったりとか、今後どういうふうに発展させていきたいか、もう一度お話しいただきたいです。
久元市長:
ウォーターフロントは、神戸にとっては、これから神戸が発展を遂げていく上で、極めて重要な役割を持っていると思います。それは昔からそうでした。
かつて、もう五、六十年、もっと前は、ちょうどポートタワーが建っている周囲が神戸の港湾だったわけです。たくさんの船が入り、出ていき、神戸のみならず西日本の物流を支えている中心的役割でした。それが、船の大型化、それからコンテナ化に伴って、港湾はポートアイランドに移っていく。そして、あそこのエリアですね、従来港湾があったウォーターフロントエリアは、これはその機能を必要としなくなっていったわけですから、別の土地利用ということを考えなければいけないという状況が、1995年の震災よりも前に既に始まっていたわけです。しかし、港湾自身も非常に大きな被害を受けたし、そういうウォーターフロントエリアの開発ということは震災前から求められていたんですけども、なかなかこれを、思い切って前に進めることができなかった。
これが、ここ近年大きく動き出してきておりまして、第一突堤の宿泊施設の整備、第一突堤の跡ですね。それから二、三年前にGLIONが本社を移転し、フェリシモさんが新しい本社をつくっていただき、そしてアトアがオープンをするという形で、にぎわいが生まれるようになり、そしてメリケンパークも開港150年、六、七年前だったと思いますけれども、リニューアルをして「BE KOBE」のモニュメントだとかカフェもできました。来年は、1万人規模のGLION ARENAがオープンするという形で、ウォーターフロントがどんどん変わっていく中で、今回、長年、神戸にとってのランドマークでありシンボルでもあったポートタワーのリニューアルが、今日、多くの方々から祝福される形で行われたということは、これはウォーターフロントのこれからの発展を確実にしていく1つの象徴的な出来事でもありますし、非常に象徴的、これは我々としては非常に喜ばしいと考えております。
記者:
すみません。先ほどもちょっと、人口の話、出ましたけども、先日の人口戦略会議による報告書で幾つかのステージが発表されて、前回須磨区が入りましたけれども、今回、集計方法の変更で入れなかったということで、そういう報告の仕方とか集計方法自体にも議論はあるんですけども、そのことも含めて市長の受け止めをお伺いしたいと思います。
久元市長:
そうですね、この人口戦略会議で示されたことは、前回、人口戦略会議、同じ主体であったかどうか、ちょっと覚えておりませんけども、増田寛也さんが中心になって発表されたときに、このままいくと消滅をする自治体がかなり出てくるという警鐘を鳴らしていただいたと思います。しかし、この10年間進行してきたというのは、やはり地方の衰退ということがかなり進んできている。これはもちろん地域によって違うということが示されているわけですが、やはりこの10年間の、地方創生の国の取組というのは、残念ながら不十分であったと言わざるを得ないということだろうと思います。非常に大事なことは、コロナの感染拡大で、一時的に東京への、東京23区をはじめとする東京都への流入が一時的には抑制されて、特に周辺の埼玉とか千葉とか神奈川への人口移動が起き、また部分的には地方への人口移動が起きたんですが、それが一時的なものであったということがはっきりしたということだと思うんですね。東京への一極集中というのが、やはりもう1回さらに加速をしているということですかね。これは地方創生ということの国が取ってきた対策というのが不十分であったから、あるいは方向性そのものが適切ではなかったので見直しが求められるというのが、今回の人口、前回は日本創成会議というところでしたね、発表したのは、日本創成会議です。今回は人口戦略会議、この人口戦略会議のレポートが示すこと、全国的に見ればそういうことではないかと思います。
神戸について言うと、前回は区単位で今後の消滅可能性ということも含めた人口動向が示されていたのが、今回は、これちょっとよく考え方が分からないんですけど、東京23区は23区単位での今後の人口動向が示されているわけです。神戸市をはじめとする指定都市を1つの市として示されているだけですね。今回は4つの分類がなされていて、Aの自立持続可能性自治体という、これは若年女性人口の減少率が小さく、どちらかというと今後とも持続可能性が高い自治体ですね。それからBがブラックホール型自治体、これは外から人口が入ってこないと仮定した場合の若年女性人口の減少率が50%以上と大きく、人口の増加分を他地域からの人口流入に依存しており、自然減対策を進めなければ厳しい状況に置かれるというもの。Cの消滅可能性自治体というのは、移動仮定の場合の若年女性人口の減少率が50%以上外ということで消滅する可能性があるとされた自治体。それから、Dのその他の自治体という4つの分類に分かれています。神戸市はDという区分ですね、指定都市の多くはDということなんですね。
それで前回は須磨区が消滅可能性があるということで、若い女性の人口が30年後に半分以上減るということでした、そういう可能性がある。今回は神戸市全体ですから、前回との比較というのはなかなか難しいんですけれども、ただ、この推計方法というのは示されていて、それを神戸市のパックに当てはめたときに、須磨区については前回の推計よりも今回の推計のほうが若年女性人口の減少率がなだらかになってきています。この原因はよく分析しないといけないんですけれども、やはり名谷をはじめとする駅前のリノベーションや様々な職住近接の取組、あるいは名谷の近辺などにおける民間投資が進んできているということが若干プラスの方向に働いている可能性はあります。それは断言はできません。
そういうことから言うと、決して楽観はできませんけれども、前回の消滅可能性というようなそういう分類から外れたということが、区単位から市単位ということになったことに加えて、この間の様々な取組というものが効果を今生みつつ可能性がある。ここからは読み取れるのではないか、決してこれは断言はできませんが、そういうふうに感じています。
記者:
今のお話をお伺いすると、国の取組としては適切ではなかった可能性もあるけれども、警鐘を鳴らした点では、各自治体の取組を促進させたという点ではこの発表自体が評価されているというか。
久元市長:
消滅可能性みたいな結構ショッキングな表現で警鐘を鳴らすという方法に議論があることは事実かと思いますが、やはり今起きている現象を具体的にデータとして示して、そして全ての自治体と言っていいんですかね、全ての自治体の今後の人口減少の動向ということを示していただいたということは、これは地方創生という国全体の取組、それから個々の自治体における地域活性化の努力ということについては、これは少なくとも神戸市にとってみれば有益な示唆を与えていただいたと感じています。
記者:
先ほどのお話の中で地方創生という国が取ってきた対策が不十分であった、あるいは方向性そのものがというお話がありましたけども、具体的にどういった対策が不十分だったのではないかというふうにお考えでしょうか。
久元市長:
やはり東京一極集中に対する対応ですよね。東京に人が集まり、それから富が集まり、情報が集まり、財貨、サービス、情報、人材、これらのものが東京に集中をしてきているということを示しているわけで、やはり東京一極集中の是正ということを少なくとも地方創生から掲げていたと思うんですが、これが機能していないということが明らかになったということではないかと思います。
さらに非常に危惧されるのが、東京に財源が集まっていますから、東京の財政的優位、地方財政という観点から見たときの東京都と23区の財政的優位というのがますます拡大をしてきています。東京都の財政とほかの46道府県の財政力には格差が広がっています。それから、同じ大都市でも東京23区、それから神戸のような指定都市、この指定都市の1人当たりの平均の基金残高、つまり貯金、もう1つは1人当たりの起債残高、借金ですね、これは23区と指定都市を比べると年々格差が広がっている。1人当たりの貯金は23区のほうがどんどん大きくなって、1人当たりの借金の格差は指定都市のほうが圧倒的に大きいわけですね。事務の守備範囲の違いというのがありますが、これは歴然としております。
こういうような豊富な財政力を背景に、東京都は例えば、介護人材について東京都単独で、ちょっと正確な数字は忘れましたけれども、200億円か300億円ぐらいの財源をつぎ込もうとしています。このことによって、今、全国的に介護人材が不足をしていますが、周辺の地域から東京都に介護人材の移動が起きる可能性がありますし、また地方からも東京にこれが移るという可能性が非常に高いですね。こういうふうに豊富な財源を使って、とにかく東京に人、必要な人材、東京が独り占めしようとするかのような政策展開が今まさに行われようとしているわけですね。こういうことを放置していると、東京にどんどん人が集まって、周辺圏域を含む地方圏というのはますます疲弊するということがはっきりしております。
それじゃ、東京に未来があるのかということですが、東京の合計特殊出生率は極めて低いんですね。つまり、赤ちゃんが生まれないところに人口がどんどん集っていくということです。これは10年前に増田寛也さんの『地方消滅』の中でも鮮やかに指摘をされていた。まさにそれがブラックホール。もう日本中から、出生率が低い東京などに若い女性が集中をしてきていると。多くの地方の自治体が若い女性人口が半分になっていく。それを消滅可能性というふうに指摘したわけですね。それが現にさらに進行しようとしている。これは日本全体にとって、こういう現象ということを本当にほっといていいのかということです。
ここは、根本的な問題として、東京に偏在する都民の経済力。これを放置していると、これが、ますますそういう格差がひどくなるということですから、そういう意味では今回のレポートは、そういう東京一極集中が現実に非常に大きなトレンドとして起きていて、まさに日本全体の出生数、あるいは合計特殊出生率の低下ということをさらに深刻化させるということ、そういうトレンドを明らかにしたのが今回の人口戦略会議のレポートではないかというふうに感じています。
記者:
ありがとうございます。
東京の一極集中を加速させてしまったという部分と、東京と地方の格差、財源的な部分ですとか人的な格差を広げたという部分ということでよろしいでしょうか。
久元市長:
そうです。
記者:
今、人口の話が出たので関連して伺いたいんですが、今週火曜日に兵庫県と各市の意見交換会があったかと思います。その場で久元市長は県の齋藤知事に対して、大阪の授業料無償化を念頭に、市としても通学定期券の無償化を通して、やれることをやって、県にはリーダーシップをというお話が、言及があったかと思うんですけども、その後、各市の市長の方から無償化のお話がかなり出てきたので、知事からは無償化に対する返事が出ていたかなというふうに理解しているんですけども、久元市長があの質問を通して伺いたかった真意というか、どういうところを念頭に置かれていたのか伺いたいと思います。
久元市長:
申し上げたとおりです。やはり、大阪の無償化というのは非常に大きなインパクトがある。つまり、兵庫県内の高校生の保護者と大阪府内の高校生世帯の保護者との間の経済的負担に非常に大きな格差が生じる。特に年収910万以上ですね。大阪はほぼ無償で、神戸を含む兵庫県はその対応がないわけです、事実上。これは、例えば私立に行っている年間の授業料は、大体、大阪は63万円が補塡されるんですが、例えば50万といたしましたら、子供1人で高校3年間で150万ですね。2人子供がいたら、2人で300万前後です。200万から300万、あるいはそれ以上の差ができる、これをどう考えるかということです。明らかだと思うんですよね。子育て世帯がそこに着目して、どこに住むのかということを決める重要な判断要素にすると。
もちろん引っ越しというのはコストが伴いますが、例えば賃貸住宅に入っていて、マイホームを持つというときには、子供さんがいてですよ、子供さんはほぼ100%高校生になるわけですから、高校生になってそれぐらいの差ができるということは、当然、どこに住むのかということを、マイホームを選ぶときには選択肢、重要な判断になるのではないか。これは子育て世帯の方からも直接、全くそうですという話を聞いています。
そうすると、そういうふうに子育て世帯の大阪府への移住ということが起きれば、特に神戸には国立、県立、市立、私立。私立もたくさんありますからね。非常にたくさんの高校があって、多様な高校教育環境というのが神戸にとっては非常に大きな財産になっております。これは高校教育の機会を提供していくという意味においても、まちの活力という意味においても非常に大きな財産で、これは影響を受けるでしょうね。つまり、高校は選ばれにくくなると、そこで競争倍率が低下する、教育水準が低下をする。教育水準が低下をすると、選ばれにくくなるので、神戸市内、兵庫県の高校がなかなか選ばれにくくなると、今度、そこで子供を育てるというインセンティブも低くなる。つまり、神戸で住むとという選択肢が、可能性が少なくなる。ということは、人口の流出を生むわけですから、人口流出、教育水準の低下、人口流出という負のスパイラル、悪循環に陥るおそれが非常に高いので、だから、これは大阪府が取った対応ですから、兵庫県でしっかり対応していただきたいというお願いを県・市調整会議でも坊議長からも発言があった。それに対して知事は、財政的に無理ですというお話でしたね。
ですから、あのときにも申し上げましたけれども、ただ県にお願いするだけではなくて、神戸市としてぎりぎりやれるところはやろうということで、今回、通学費の、神戸市内の高校に通う場合には無償化するということにしました。神戸市としては、ぎりぎりここまでやったので、そこで県にお願いをしようということです。これは神戸市だけが大阪の状況から免れるということのない、これは1つの提案なんです。こういう影響が神戸だけじゃなくて阪神間の地域でも起こり得るでしょう。だから、大阪府は巨額の財源をここに投入していますから、兵庫県だけではそれは無理だということもよく理解できます。だから、兵庫県も対応してもらう、阪神間の自治体にもこういう対応がやっぱり必要ではないだろうか。あるいは、私立も含めて学校関係者に対しては、どういう対応をするのがいいのかということを知事のリーダーシップでしっかり検討していただきたいというのが私のお願いの趣旨です。